「中山方式」見直しを 「自由民主」憲法改正

「公開憲法フォーラム」にビデオメッセージを寄せる岸田文雄首相=3日午後、東京都千代田区(辻本奈緒子撮影)
「公開憲法フォーラム」にビデオメッセージを寄せる岸田文雄首相=3日午後、東京都千代田区(辻本奈緒子撮影)

改憲実現へ今年が正念場

5月3日は76回目の憲法記念日だった。「自由民主」(5・16)では2面で憲法記念日の様子や党としての改憲に向けた取り組みなどを紹介した。憲法改正を結党以来の党是とする自民党らしく、1面での紙面展開を期待したが、トップニュースは新型コロナウイルスの「5類」移行に譲った形だった。

憲法記念日当日にアフリカ歴訪中だった岸田文雄首相(党総裁)は、民間の改憲派団体が開いた集会にビデオメッセージを寄せ、「社会が大きく変化する今だからこそ、われわれは挑戦し続けなければならない」と訴えた。自民党が掲げる改憲4項目(①自衛隊の明記②緊急事態条項③合区の解消④教育の充実)についても「早期の実現が求められる課題だ」と語った。

岸田氏は2021年の党総裁選で、立候補した4氏の中で唯一、憲法改正について「任期中に実現したい」と明言。先月25日に開かれた党憲法改正実現本部の会合でもそのことに触れ、「改憲に対する思いはいささかも変化していない」と強調した。岸田氏の総裁任期は来年9月までで、任期中に改憲を実現するためには残された時間は多くない。国会での議論は今年が正念場になるだろう。

党憲法改正実現本部は岸田氏の総裁就任後、党憲法改正推進本部から衣替えしたものだ。自民党は各都道府県に実現本部を置き、各地で憲法改正に向けた集会を開くことを運動方針に掲げている。「自由民主」では実現本部の活動状況についての報告もあり、それによると昨年度の集会の開催回数は目標の1000回を達成したという。

国会では、国政選挙で改憲に前向きな日本維新の会が躍進したこともあり、衆参両院の憲法審査会が継続して開催されるようになっている。ただ、今のところは論点整理などが主で、具体的な改憲原案づくりへの道筋は見えてこない。立憲民主党や共産党など改憲自体に否定的な立場の党もあり、実現に向けてはもう一段階深い議論に踏み出す必要がある。

国会の議論を進めるに当たって、今後壁になる可能性があるのが憲法審査会の「中山方式」という運営上の慣例だ。憲法審査会の前身である憲法調査会の会長を務めた中山太郎元外相の下でできた不文律で、改憲論議を政局に絡めないことや少数政党の意見も尊重することなどを柱としている。

もともとは改憲に現実味がなかった2000年に、反対派も同じテーブルに着いて円満に議論を行えるよう打ち出された方針だ。憲法審査会でも受け継がれ、与野党の合意の下、審査会が開かれるのが共通認識となったが、近年は野党がこれを逆手に取って審議拒否するなどの動きも常態化していた。

今国会では、前述したように憲法審査会の開催そのものが難しいという状態からは脱しているものの、今後より踏み込んだ議論に進んだとき、本来とは異なる文脈で「中山方式」が用いられ、再び議論の停滞を招く可能性は否定できない。憲法審査会はこの先もより多くの会派が参加した上で確実に議論を積み重ねられるよう、運営方針を見直すべきだ。

憲法改正の論議は国の根幹に関わるものであり、改憲するか否かを最終的に決定するのは国民だ。憲法と関係のない政局に絡めて議論を停滞させることができる構造をそのままにしておくのは、国民に対してあまりに不誠実ではないだろうか。憲法は時代に合わせて変える必要があり、そのための議論の環境もまた整備する必要があるだろう。

(亀井 玲那)

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