支持率低迷する尹政権 内政課題への取り組み重要
尹錫悦政権が発足して1年が経(た)った。支持率は30%台で低迷している。前の文在寅政権に失望した世代の期待が後押しして誕生したのが尹政権だが、前政権の負の遺産や党内紛などで思うような国政運営はできていない。韓国の月刊誌が総括記事を出した。
候補時代から参謀として側(そば)で支えた与党国民の力最高委員の金(キム)柄玟(ビョンミン)氏が新東亜(5月号)のインタビューに答えている。
「(尹)大統領は最初から国政正常化のみに関心を示した。政治的計算や利害関係は考えすらしなかった」
検察総長(検事総長)だった尹氏には議員経験もなく、ヨイド(日本でいう永田町)のルールさえ知らずに権力の頂点に立った。当初からこの政治経歴のなさが危惧されたが、むしろ大統領に当選したのはそうしたヨイドの論理で動かないところに期待した票が多かったからだ。
月刊朝鮮(5月号)はこうした尹氏を「適切な妥協よりは最終勝負を選ぶ“風のファイター型リーダーシップ”」だと評する。要するに根回しや妥協といった従来の政治スタイルとは逆の馬力で中央突破していく“底力政治”という評価だ。
しかし「経済的指導力が後回しにされたという点で国民には大変でしんどい1年だった」とも認めている。
実は支持率低迷の理由はこの経済など内政課題に改善が見られないことに由来している。前政権の負の遺産といえば不動産高騰、労働時間短縮、若者の就職難などが挙げられる。新東亜で金最高委員は、尹政権になって「ソウルのアパート価格は8カ月連続で下がり、2022年8月に比べて8・03%(今年3月)に下がった」と実績を強調するが、それが支持率アップには反映されないのだ。
尹政権は「不動産、労働市場、年金問題など異常な部分を少しずつ修正しているが、有権者が期待する水準には及んでいない」と金委員は率直に認める。
新東亜の別の記事「なぜ30代は引き続き文在寅で、尹錫悦支持を撤回したか」では結局どの国政課題でも改善が認められないことが支持率低迷の原因だと結論付けている。月刊朝鮮も「民生・経済政策を積極的に推進していく」ことが重要だと指摘する。これらが手薄だったということだ。
たかだか1年で政権の評価を出すのは性急だが、1期5年の韓国大統領にとって初年での支持率30%台はあまりに低い。対日対米関係改善など外交分野で成果を上げるよりも内政課題への取り組みが重要であるというのが一致した見方なのである。
(岩崎 哲)