「これまでの・これからの100年」を考察し警鐘鳴らすエコノミスト

至る所に危機の“芽”

政治家は「国家の100年の大計」を立てるべきだ、といわれる。しかし、現代にあって100年はおろか5年先、10年先を読むのさえ難しい時代といわれる。新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的感染拡大)やロシアによるウクライナ軍事侵攻、さらには4月の欧米金融機関の経営破綻など突然の出来事として受け止められている。ヒト・モノ・カネがグローバル化した昨今、遠い未来の世界の全体像を描くのはもちろん、中短期的な出来事でさえも予測することは難事業であろう。

そうした中で週刊エコノミスト(5月2・9日合併号)は「これまでの・これからの100年」をテーマに特別号として企画を打ち出している。もっとも今回の特集は、これからの100年を予測するという大掛かりなものでもなく、同誌が今年創刊100年を迎えるということで、この100年間の日本経済を含めた世界経済の動向あるいはこれまでの経済学史を振り返ることが主眼となっている。折しも、発行日は5月上旬の連休日となっていることから「休日の時間を利用して、これまでの100年の経済学の歴史、世界動向を勉強してみては」という趣旨もあったのだろう。

同誌は宮崎成人・元財務省副財務官の100年に及ぶ国際金融危機の歴史に関する論文を掲載している。すなわち、これまでの100年間、1920年代後半から30年代にかけて起こった大恐慌、71年のニクソン・ショック、80年代の中南米債務危機、97~98年のアジア通貨危機、2007~08年のリーマン・ショック、10年に発覚したギリシャの財政危機をきっかけとしたユーロ危機があった。

宮崎氏は「過去100年間の歴史は、資本の流れの変化に伴う国際金融危機の歴史でもあった。危機のたびに、今後同様の危機が発生しないよう、官民が協力して予防措置を導入してきたが、それでも思いがけないところから次の危機が生まれてくるのが現実だ」と綴(つづ)り、今回の欧米で起こった銀行破綻を踏まえ「過去10年以上にわたり世界中で見られた超緩和的な金融環境が急速に転換されている現在、危機の芽は至るところに隠れていると考えるべきだろう」と警鐘を鳴らす。

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