「慢心」レッテル貼り
朝日は総選挙直後の世論調査で「来年(22年7月)の参院選で野党による候補者の一本化を進めるべきだと思うか」と問うたが、「進めるべきだ」27%に対して「そうは思わない」が51%に達した(21年11月8日付)。
これには「天声人語」が驚愕(きょうがく)し、「衆院選でおきゅうをすえられたのは、与党ではなく、共闘した野党だったのかもしれない。選挙後に実施された本紙の世論調査を見て、そんなふうに思った」と素直に書いた(同13日付)。おきゅうをすえられたのは朝日もそうで、さすがに参院選では野党共闘の声を潜めた。
だが、4月の衆参補選ではまたぞろである。開票結果を伝える朝日24日付1面「視点」は「『慢心』自民 想定外の苦戦」との見出しで、「政権批判の受け皿になりうる政治勢力が出てきた場合、多くの有権者の選択が変わることを示した。そうした民意を受け止めるため、まとまれなかった野党はどう応えるのかも問われる」と、まとまれなかった野党を持ち出している.
どうやら野党共闘を誘導するため岸田政権に「慢心」(おごりたかぶる)のレッテル貼りを考えついたようだ。政権批判の受け皿になり得る政治勢力は、朝日調査でも明らかなように批判ばかりせず「現実的な対案の政策」を掲げる勢力だが、視点は肝心の政策には一切触れない。
同日付社説「政権運営 厳しく反省を」も岸田政権の防衛費増や原発推進への批判を並べ立て「(衆院千葉5区では)野党候補の得票の合計は、自民を大きく上回っており、野党の連携が実現していれば結果は違っただろう」と未練がましく言う。ここでも朝日は政策抜きである。
世論調査から学びを
だが、野党といっても維新の会と国民民主党は立憲民主党や共産党と政策で相いれない。国民の玉木雄一郎代表は次期総選挙では「憲法やエネルギー、安全保障の政策で一致しない政党とは選挙協力しない」と語っている(各紙26日付)。もはや朝日の野党共闘論は破綻しているのだ。
冒頭の朝日調査は、政権交代を目指す野党の防衛政策は「現実的な政策」か「理想的な政策」かを問うたところ、「現実的」が85%で、「理想的」は10%にとどまった。現実的と理想的の中身は不明だが、少なくとも朝日的論調は国民の眼中にないはずだ。自社の世論調査に学ばないなら朝日もまた万年野党である。
(増 記代司)