水素の障壁は安全性
そこで「太陽光や風力などの自然エネルギーでグリーン水素を製造して貯蔵しておけば、燃料としても使えるし、日照不足や風が弱いときに発電に利用できる。これがグリーン水素の大きなメリットだ」と。英電力会社ナショナル・グリッドの幹部は「人口密度が高い地域に水素を輸送できるよう」、今後の輸送インフラ整備の重要性を語る。
片や、日本政府は脱炭素化を加速させるため、水素のエネルギー化に向けた基本戦略を改定する方針を固めたという段階。水素発電の商用化などをさらに進めるため、新たに今後15年間で官民から15兆円程度の投資を呼び込む計画を検討することが決まったようだ。
エネルギー開発は、脱炭素化とエネルギー自給問題をセットで解決すべきであるが、わが国の場合、これまで必ずしもそうでなく、ばらばらに論じられることが多かった。政府と民間との間に意思疎通が十分でなかったせいもある。この点、英米の戦略には一日の長があると言える。
ただし、英米でも今のところ「グリーン水素に限らず水素普及の大きな障壁は安全性」「水素は無害だが可燃性ガスで、天然ガスやガソリンよりも着火しやすい」。しかしこれも順次、解決に向かっており「既に多くの州で水素で走るさまざまな車の実証試験が実施され、本格的な実用化に向けデータが蓄積されている」。水素は天然ガスより高価だが、量産化によるコスト低下が期待される。日本の巻き返しを期待したい。