長引く公算大の戦争
恐らく今ウクライナに関して一番面白い対談をするのはこの2人だろう。東大先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏と、ニューズウィーク日本版のコラムニストでロシア公使、ウズベキスタン大使を務めた河東哲夫氏だ。意外にも両名は深い関係があったと同誌は紹介している。小泉氏が「まだ『軍事オタク』だった頃に見いだしたのが河東氏」で「外務省に分析員として推薦した」のだという。
この2人を同席させて対談誌面を作り2回に分けて掲載し、さらに同誌のユーチューブチャンネルでも公開すると予告した。贅沢(ぜいたく)な企画である。特に小泉氏に関して同誌は「正確な情報分析と分かりやすい解説で高い信頼を得てきた」とべた褒めしており、同感だ。
今号(4月4日号)の前編「ウクライナ戦争の『天王山』とこれから」は戦争は早々には終わらない、長引くという結論だ。ロシアとウクライナは旧ソ連の中で1、2を争う軍事力を持ち、それぞれの戦争目的も達成されていない。外交や交渉で停戦が実現する状況ではないというのである。その中で同誌は「1つの大きな焦点」として「クリミア半島の奪還」の可否を挙げている。河東氏は「ウクライナ軍は春になったらクリミアを獲るために仕掛けるかもしれません」と見通し、小泉氏も可能性を否定しなかった。
その際、同半島南西部にある軍港セバストポリの重要性に鑑み、ロシアは「核を使うかもしれない」と河東氏は見通すが、小泉氏は同都市の政治的象徴性は認めながらも、「そこまではやらないのではないか」と懐疑的だ。
ロシアのプーチン大統領が核を使うかどうかは世界が最も関心を寄せ注目している点だが、両専門家でもはっきりしたことは見通せない。