
してやったりの中国
サウジアラビアとイランが国交の回復で合意したことが話題を呼んでいる。それだけでも事件だが、仲介したのが中国だったことが、世界を驚かせた。交渉は水面下で進められ、米国憎しの中国としては、してやったりというところだろう。
米海兵隊の元情報将校で元国連兵器査察官のスコット・リッター氏は、エネルギー関連情報サイト「エナジー・インテリジェンス」で、中東の地政学的「ゲームチェンジャー」となる可能性を指摘、警告している。
リッター氏は、「1年前、米国の中東政策は上向きだった。イスラエルと湾岸諸国の関係を正常化させた」と強調した上で、「この現状が一夜にして変わった」とその衝撃の大きさを明らかにした。
同氏は、「最も重要な中東湾岸の2カ国との中国の経済関係の新時代の先駆け」となるものであり、「両国の社会、経済に中国の一帯一路が組み込まれていく」可能性があるとみている。それはすなわち、中東の軸足が「西から東」にシフトすることを意味する。
かつて、ヨルダンのアブドラ国王は、イランが地中海までのイスラム教シーア派の影響圏拡大を目指しているとして、これを「シーア派の弧」と呼んだ。イラク、シリア、レバノンがその中に入る。
シリア、レバノンは既にイランの影響下だ。リッター氏は、このシーア派の弧はその後「カオスの弧」に変わったと指摘する。イランの影響力が及ぶ地域はことごとく戦場と化している。イラク、アフガニスタン、シリア内戦、レバノンのシーア派武装組織ヒズボラとイスラエルの戦争、イランが支援するフーシ派とサウジ、アラブ首長国連邦(UAE)の戦争、まさにカオスだ。