
徹底された情報管理
長年、敵対関係にあったサウジアラビアとイランが10日、外交関係修復で合意した。2カ月以内に双方の大使館を再開するという。仲介したのは中国だった。驚かされたのは、これだけのビッグニュースが、公表されるまで一切表に出なかったことだ。
サウジ、イラン両国の合意を取り付けるまで中国は水面下で何度も外交交渉を重ねてきたことだろう。通常、その段階で動きの兆候は取得されるものだが、今回はそれが皆無だった。それほど中国は情報管理を徹底した。これは中国という強権国家の体質に由来する。
さて、毎日の19日付社説「イラン・サウジの正常化 中国仲介が示す構造変化」で、「両国の和解が地域の緊張緩和につながることを期待したい」とした上で「中東外交で目立った存在ではなかった中国が重要な橋渡し役を果たし(中略)、『内政不干渉』を重んじる中国の実利外交が歓迎された」というのは少々、大げさだ。
もともと地政学的潮流としてあった流れに中国はただ乗っただけで、これから中国が米国に取って代わり、歴史的にも地域的にも複雑に錯綜(さくそう)する中東和平の恒久的な枠組み構築でリーダーシップを発揮できるかどうかは甚だ疑わしいところだ。
ただ毎日は結論として、「中東の持続的安定のためには、米国の役割が依然として重要だ」と一見、正論を語りながら「米中には競争意識を持ち込まず協力を模索する姿勢が求められる」と続ける。要するに、中東の和平のため覇権競争などせず、手を取り合って協力せよとエールを送っているわけだが、これではナイーブすぎ天然ボケに近い。そもそも国家というのは純粋無垢(むく)な幼子のようであっては、いとも簡単に寝首をかかれてしまう。