科学的に安全な基準
東日本大震災から12年の節目を迎え、地震・津波災害からの復興は進むが、なおも難題を残しているのは福島第1原発事故による原子力災害だ。廃炉作業は続いており、作業で生じる放射性物質を含んだ汚染水を処理したALPS処理水の貯蔵は限界に近づいている。
12日放送の報道番組では、前日に福島、岩手、宮城3県で行われた東日本大震災12年の追悼式と共に震災を巡る問題をテーマに扱っていたが、焦点は岸田政権の「原発回帰」や処理水問題になっている。特に処理水は貯蔵に限りがあり、政府は今年の春から夏ごろ海洋放出を開始する方針だが、福島県の漁業関係者からは反対の声が強い。
これは汚染水から除去できない放射性物質トリチウムを処理水は含有しているためだ。NHK「日曜討論」は、海洋放出される処理水のトリチウム濃度は国の基準の40分の1まで薄められると説明。また「トリチウムは自然界でも生成されるため雨水や水道水にも含まれる」と捕捉した。
フジテレビ「日曜報道ザプライム」も処理水のトリチウム濃度は1㍑当たり1500ベクレル未満で、これは国の基準6万ベクレルの40分の1、世界保健機関(WHO)の飲料水基準1万ベクレルの7分の1であり、さらにカナダ、フランス、中国、韓国など世界の原発から放出される処理水よりも薄い濃度であることなど詳しく報じた。
ALPS処理水が国際基準を満たしていることを知っているか否か問う同番組内のアンケートでは、「知っている」83%、「知らない」17%なので理解は広がっていると考えられる。この処理水が東京電力2日の発表でタンク1066基、貯蔵量96%と限界に達しつつあるとして、政府は海洋放出しようとしているのだ。