沖縄返還の日米密約 密かに情を通じ入手した文書、報道倫理には誰も触れない

報道せず暴露させた

元毎日記者、西山太吉氏が亡くなった。沖縄返還交渉(1972年)を巡る日米間の密約問題で話題になった人である。氏の訃報を大半の新聞は「沖縄『密約』報道」(読売2月26日付)と「報道」と書いている。本欄で何度か指摘してきたことだが、報道した事実はない。新聞が「密約報道」と書くのは虚偽である。亡くなった人を鞭(むち)打つ気は毛頭ないが、ことは新聞の報道倫理に関わる。

発端は72年3月、沖縄返還に際して400万ドル(当時、12億円)を日本が肩代わりするとの「日米密約」を横路孝弘・社会党代議士(当時)が外務省の機密文書を元に国会質問で暴露したことだ。これが報じられると同省の女性事務官が自首。毎日政治部の西山記者に漏洩(ろうえい)を唆されたと供述し、国家公務員法違反で同氏も逮捕された。

西山氏が機密文書を入手したのは71年だが、毎日紙上でスクープせず、横路氏に手渡して暴露させた。当初、新聞は「知る権利」を主張し西山氏の行動を正当化したが、女性事務官を「ホテルに誘ってひそかに情を通じ、これを利用」(起訴状)して機密文書を入手したとされると批判が殺到。結局、毎日は西山氏を休職(後に退職)、編集局長を更迭処分とした。これを機に毎日の部数が激減し77年に事実上、倒産した(現在は新会社)。

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