
理解増進という美名
埼玉県富士見市議会議員、加賀ななえが先月末に投稿した3分ほどの動画が波紋を広げている。同県では昨年6月、「性の在り方が男女という二つの枠組みではなく連続的かつ多様」と謳(うた)った、いわゆるLGBT理解増進条例が成立した。
加賀はこれまで、LGBT当事者への支援を表す“虹色マスク”を付けて議会質問を行うなど、「性の多様性」を尊重する政策に取り組んできた。しかし、「その政策の変遷について説明する必要がある」と考えたことから動画をアップしたという。
同条例を提出した自民党県議団は成立前、パブリックコメントを募集した。加賀がLGBT政策について疑問を持ったのはその時だった。体は男性だが、「性自認」が女性(トランス女性)が女性トイレを使うことに対する恐怖を訴えても、それが「差別」とされてしまう現実を目の当たりにしたのだという。
加賀自身も「怖いと感じる」と支援に携わる人に伝えた。しかし、「それはあなたの男性恐怖であり、カウンセリングが必要だ」と、差別的扱いを受けた。つまり「理解していない」から恐れるのだと、内心を否定されたのだ。これが「理解増進」という美名の危険なところだ。加賀は「県行政においては一方の人権のみを尊重するのではなく女性・子供の人権も考えた政策を望む」と訴えることにしたのだという。