信じられぬ条約覚書
ウクライナがロシア本土に反撃できないのは、プーチン露大統領が核報復を明言しているからだ。ウクライナといえばかつて膨大な核兵器があった。ソ連解体後、それらはロシアが引き取った。その際、ロシアに米国と英国が加わり、ウクライナとの間で安全保障を約束する「ブダペスト覚書」(94年)が交わされる。米英露は「ウクライナの主権と領土の保全を保障し、経済的、政治的圧力をかけない」と約束した。
ところがロシアはこれを平然と破った。記事では「これほど露骨に国際的な約束を破られたら、誰も約束など信じなくなる」と言い、例えて言えば、武器を取り上げて「君を攻撃しないし守る」と約束しておきながら、手足を縛って殴り付けているようなものだ。卑怯この上ない。
こんな現実を見せられれば、「核なき世界を目指そうという意欲はそがれ、逆に核兵器の取得や使用に意欲を燃やす国やテロ組織が増える」とし「核武装を目指す国は増える」と記事は断言している。
そして教訓を三つ挙げる。「その1、核兵器はあったほうがいい(他国の領土を奪うにもいいし、他国に領土を奪われるのを防ぐにもいい)。その2、核兵器を手放すのはよくない。その3、条約だの覚書だのを信じてはいけない。たとえ世界中の国が批准し、法的拘束力を持ち、全ての大国が支持していても、そんなものは無意味だ」と。
この記事には核廃絶と世界平和に対する高貴な精神がない、と批判するのは簡単だ。しかしリアリズムはそんな空念仏を吹き飛ばす。すでに韓国では「核武装論」が議論されている。尹錫悦大統領が口にして左派野党が騒ぐ以上にワシントンが色めき立った。北朝鮮がミサイルを飛ばし、近々7回目の核実験をするとみられており、待ったなしなのだ。