崩壊するNPT体制
ロシアのウクライナ侵攻から1年が経った。ウクライナ戦争から世界が学んだことは、核保有国が非保有国を攻めた場合、誰も手出しできないという現実だった。これを目の前にして、各国は外交や安全保障政策の再点検に入ったことだろう。
わが国は昨年末、安保関連3文書改定したが、これは既に安倍政権から取り組んできたもので、ウクライナ戦争を踏まえてのものではなかった。だから、どうみても現実の国際情勢が反映されているようには見えない。野党の追及はトマホークの購入費用ばかりだし、岸田首相は「ヒロシマ」サミットで核廃絶の念仏を説くことしか頭にないようだ。
ニューズウィーク日本版(3月7日号)が「『ウクライナ後』の世界秩序」を特集している。その中でスウェーデン国際問題研究所研究員のアンドレアス・ウムランドとヒューゴ・フォンエッセンが書いた「NPT体制の崩壊がもたらすカオス」は身もふたもなく現実の世界を描き出し、「核武装の勧め」をしている。
NPTすなわち核拡散防止条約は1970年に発効した。191カ国が参加しており、軍縮関連協定で最も多くの国が署名している。目的は核兵器の拡散を防ぎ、原子力の平和利用を定めたもの。米国、英国、フランス、ロシア、中国の既に核兵器を持っている国々には「廃絶努力」が課せられ、その他の非保有国は「造っても、持ってもならない」という協定だ。とはいえ現実にはインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮が核兵器を持ち、当然ながら彼らはNPTを拒否するといった不平等で穴だらけの協定だ。