旧統一教会叩きと違憲訴訟

会見する教会改革推進本部の勅使河原秀行本部長(左)と福本修也弁護士 =9月22日午後、東京渋谷区
会見する教会改革推進本部の勅使河原秀行本部長(左)と福本修也弁護士 =9月22日午後、東京渋谷区

自己保身の議会「断絶」決議

安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに巻き起こった世界平和統一家庭連合(旧統一教会)批判報道は最近かなり頻度が少なくなっている。その一方で、地方議会に広がった教団との「断絶決議」は「違憲」とする訴訟が信者らによって、現段階で5件起こされている。

教団バッシングの熱狂が少し冷めている今は、地方議会による断絶決議の実相を冷静に分析できる時期ではないか。筆者には、決議は岸田文雄首相による自民党と教団の「絶縁宣言」が誘因したようにみえる。

5件の訴訟の原告代理人はすべて信者でない1人の弁護士だ。代理人を引き受けた彼の目に、教団バッシングの熱狂がどう映っているのか。それを知ることは政治と宗教の関わり、反宗教勢力の存在などさまざまな側面を持つ旧統一教会問題をより客観的に分析する上で意義あることだ。

これまでに3度にわたって「報告徴収・質問権」を行使した文部科学大臣は4回目の質問権を行使する方針だという。その上で、解散請求を行うのか、できないと諦めるのか。それともさらに質問権を行使し先延ばしにするのか。今は、これらの判断を迫られる時期。そこに信者でない弁護士が信者側に立ち、情報を発信することはどのような影響及ぼすのか。興味深い。

月刊「正論」3月号に、「旧統一教会信者なら人権侵害していいのか」と題した論考が載った。寄せたのは徳永信一弁護士。富山市、大阪市、大阪府富田林市、大阪府、そして北九州市と続く断絶決議違憲訴訟の原告代理人だ。それぞれの地方議会は昨年、旧統一教会およびその関連団体との関係を「断絶する」あるいは「関与しない」などと決議した。

断絶決議には市議会だけでなく首長ならびに行政当局も教団・関連団体と「一切関わりを持たない」と「決意表明」する内容もある。自治体内に教団の教会や関連団体が存在する場合、当局はそれらと一切関わらないことは法律上、可能なのか。そもそも「一切関わらない」の意味が不明確である。

信者らは議会に決議の撤回を求める請願を出そうと、紹介議員を探したが、決議を理由に断られている。この事実を知れば、「旧統一教会信者なら人権侵害していいのか」と、信者でなくても疑問に思うだろう。信者ならなおさらだ。だから、憲法の保障する信教の自由と請願権を侵害され差別的扱いを受けたとして、決議取り消しと自治体に損害賠償を求め提訴したのである。

論考の略歴によると、徳永氏は「沖縄集団自決冤罪訴訟弁護団」「孔子廟違憲訴訟原告代理人」とあるから、保守派弁護士とみていい。法理論から見れば、断絶決議は人権侵害であり憲法違反は明らかなように思われる。しかし、沈静化しているとはいえ、教祖が韓国人の教団に対する国民の拒否反応は強く、世論調査を行えば教団解散に8割の人が賛成する。そんな寒風の中では、信者の代理人を務めれば弁護士自身もバッシングの嵐に巻き込まれるのは避けようがない。

それでも、徳永氏は「バッシングは度を越えていると考えていた筆者はある覚悟をもって引き受けた」と述べている。その覚悟とは何か。弁護士としての正義感だけなのか。筆者が同氏の論考に関心を持った理由の一つはここにある。

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