問われる覚悟と力量
週刊文春が「安倍元首相暗殺『疑惑の銃弾』」を2週にわたって「徹底検証」している(2月16、23日号)。同誌は1984年に同じ「疑惑の銃弾」のタイトルで長期にわたって報道したことがある。いわゆる「三浦和義ロス疑惑」で保険金殺人だった。今回もそうした長期連載になり疑惑の解明に至るのかどうか、同誌の覚悟と力量が問われる。
これまでメディアは「犯人の動機」に焦点を当てて集中豪雨のような報道を続けてきたが、この事件にはもっと重要な「疑問」がある。安倍晋三元首相を襲った銃弾はどの角度から入ったのかだ。事件直後、元首相を診た病院側の説明と後日、警察が発表した説明が食い違うのである。
しかし不思議なことにこの重大な違いにどのメディアも目を向けてこない。警察発表をそのまま流すだけだ。病院と警察の発表がなぜ違うのか、合理的な説明がなされないまま読者・国民は疑問の中に放置されてきた。
本紙は昨年10月と12月に「安倍元首相暗殺の闇」として連載を行ったが、他のメディアに本腰を入れた報道はついぞ見られなかった。
16日号で同誌は「疑惑の銃弾」の存在を指摘する。昨年9月30日に開かれた奈良県議会総務警察委員会で安枝亮県警本部長は「右前頸部、首の付け根の右前あたりなんですけれども、そこから入って右上腕骨に至っている」と説明したが、「これこそが、専門家たちが疑問視する『疑惑の銃弾』なのである」としている。