政府にも厳しい批判
日経は「監督官庁である経済産業省など政府も失敗をきちんと検証すべきだ」としたが、その政府にも厳しい批判を向けたのが朝日である。
「挑戦には失敗はつきものとはいえ、新たなものづくりの柱に期待された国家プロジェクトが頓挫した事実は重い。製造業の実力が低下している現実を直視し、教訓を次に生かす必要がある」として、他紙と違って事業化する力だけでなく、「技術力そのもの」を問題視した。
主翼に炭素繊維の複合材を使うのが軽量化の切り札のはずだったが、技術課題が解決できず、アルミに切り替えた。長所とされる低燃費と低騒音も、米社製の最新エンジン頼みで、他社との差別化が難しかった――。
こうした同紙の指摘には、確かに尤(もっと)もな点もあるが、すべての分野で技術が優れている必要はない。国産で全てできれば、それに越したことはないが、航空機は部品数の多い産業であり、海外産を使用しても別におかしくない。
少人数用のビジネスジェットでは、読売などが指摘するように、ホンダ子会社の納入機数が5年連続で世界首位となるなど技術力の高い部品メーカーも多い。スペースジェットも現に、これまでに3900時間超の試験飛行を行ってきている。朝日の見方は、言い過ぎであろう。
そういう点では、航空機産業の維持・発展、基盤強化のために、「改めて(失敗の)要因を精査し、今後の様々な技術開発で教訓とせねばならない」と指摘した読売の方が妥当である。
朝日にない前向きさ
中日新聞東京本社発行の東京も、開発事業を担った三菱航空機が地元企業であるだけに「量産を信じ期待した多くの中小企業に報いるためにも、国と同社は将来の産業創出に資する教訓を導き出さねばならない」とした、朝日には感じられない温かな前向きさがある。
「一つの大きな夢はついえた。だが、だからといって難事に挑戦する気概まで失えば、それこそ最大の損失である」と同紙。同感である。
産経も15日付で、「新事業への挑戦続けよう」の見出しの前向きな社説を掲載した。
(床井明男)





