
悲願達成ならず中止
10日付日経「教訓残した国産ジェット機開発の失敗」、東京「国産旅客機撤退/成功の『母』にしてこそ」、14日付読売「国産旅客機撤退/検証を産業の強化につなげよ」、朝日「航空機の開発/『技術』の過信戒めて」――。
三菱重工業が7日に国産初の小型ジェット旅客機「スペースジェット」(旧MRJ)の開発中止を発表したことを受けて、社説を掲載した各紙の見出しである。
スペースジェットは実現すれば、約半世紀ぶりの国産旅客機となり、日本の航空機産業復活の象徴になるはずだったが、その悲願達成はならなかった。2008年から15年の月日をかけて、国費約500億円を加え累計1兆円規模の開発費が投じられた大型プロジェクトの中止に対し、各紙の論調は総じて厳しく、徹底した検証と教訓を求めた。
特に厳しかったのは日経で、「日本の産業史に残る失敗」と断じ、「そもそも見通しが当初から甘かったと言わざるを得ない」と指摘した。
事業化決定から1年余りでの主翼や胴体など基幹部分の大幅な設計変更、その後の主翼の強度不足などの欠陥露呈で13年予定の初号機納入は6度も延期に。「当初1500億円と見積もっていた開発費が膨れ上がるだけでなく、開発が遅れる間に肝心の性能面でも海外企業に追い抜かれてしまった」と同紙。
機体の安全性などに問題がないことを示す「型式証明」の取得では、1973年に生産終了した「YS―11」以来の作業のため「このノウハウが欠けていた」(同紙)。
海外から招いた認証取得の専門家を開発全体の責任者に据えたが、その頃から「現場が混乱して事業化に暗雲が漂い始め」、「経営陣と現場の関係もぎくしゃくした感が否めな」かったという。