
難しいミサイル迎撃
「敵基地攻撃能力」の保有が「安保関連3文書」に明記された。防衛費も大幅に増額される。「日本は専守防衛から1歩踏み出した」と中国や韓国が色めき立ったが、中身を見ると他国がどうこう言うほど日本の防衛力が強化されるのか、という疑問も残る。
米国から2027年度までに最大500発の巡航ミサイル「トマホーク」を買うと報じられている。この買い物に噛(か)みついているのが週刊朝日(2月10日号)。「『防衛政策大転換』の落とし穴」の記事で「防衛ジャーナリストの半田滋氏」が指摘している。曰(いわ)く「トマホークの爆買いこそが無駄遣いです」と。
そもそも反撃能力を持つ必要が生じたのは、極超音速ミサイル開発など北朝鮮や中国、ロシアのミサイル能力向上によって、現在のわが国のミサイル防衛システムでは対処が難しくなったためだ。だが実際にトマホークでカバーできるのだろうか。
トマホークの飛行速度は時速900㌔。これでマッハ20(音速の20倍)で飛んでくる敵のミサイルを撃ち落とすのは難しい。実際には巡航ミサイルが発射されてから軌道を計算し、放物線を描いて落下してくるミサイルを撃ち落とすことになるが、敵が撃ってくるのは弾道ミサイルばかりとは限らない。
「ジャーナリストの谷田邦一氏」は「巡航ミサイルや複雑な軌道で飛んでくるようなミサイルは(その軌道や着弾点が)最後までわかりません」と語る。なので「中国のような軍事技術が進んだ国から見れば脅威にならない」(半田氏)のだ。
そもそも中国は日本全土をカバーできる中距離ミサイルを既に2000発保有している。これに「最大500発のトマホーク」で対応するというのは何かの冗談なのか。もちろん2000発全部を日本に向けているわけではないが。