増額でも減る出生数
加えて、スタジオ出演したフリージャーナリスト、浜田敬子氏が「麻生さんに象徴されるように日本では政治家が常に少子化の原因を女性の生き方に帰結してきたことに非常に問題がある」と畳み掛ける。そのように意図した発言かは図りかねるが、浜田氏は少子化の原因について、①若者の将来への不安(特に経済)②女性に重くのしかかる家事・育児の負担③公的支出の少なさ―を問題にしていた。
晩婚化は確かで、1989年の初婚平均年齢は男性28・5歳、女性25・8歳、その後30年間じりじりと上がり2019年には男性31・2歳、女性29・6歳になっている。併行して出生数も下降線をたどっている。医学的に30代に入ると妊孕性(にんようせい)(妊娠しやすさ)が下がる。麻生氏の発言の通り出産年齢の高齢化は少子化の一因であることは事実だ。
だが、07年の柳沢伯夫厚労相の「産む機械」の例え話をマスコミや野党、とりわけ女性政治家が激しく攻撃したように、政策よりも言葉狩りに翻弄(ほんろう)されたきらいがある。各党は萎縮して出産の奨励より、対策予算の選挙公約を競って叫んできた。1999年に自民党が公明党と連立して導入された児童手当、民主党政権での子ども手当、出産一時金の増額、育児休業給付が父親まで対象になるなど拡充されてきている。しかし、少子化は止まってない。
出生率反転に向け岸田政権は「異次元の少子化対策」を掲げ、さらなる優遇、支給金増額を行う方向だ。かつて民主党政権は公約した子ども手当15歳以下1人当たり月2万6000円支給の財源を確保できず支給は半減した。二の舞いにならないとも限らない。
これまで予算を増額しながらも出生数増加につながらないのは、若いうちに結婚し、子供を多く産むということが言いにくいことに象徴される世相が原因ではないか。出生率が2を超えていた74年以前、①~③の条件が今日より良かったわけではない。
婚活サポートに役割
フジテレビ「日曜報道ザプライム」は、そもそも婚姻数が少なくなったと問題にしていた。調査から男女とも8割以上が結婚したいと希望しながらも、結婚しない理由の最上位は男女とも巡り会えないという理由だった。
家同士のお見合いなど縁談の風習が薄れてしまい、恋愛結婚の機会もなかなか得られない実情を反映してか、番組は結婚相談所の一場面を紹介していた。これから民間、自治体の婚活サポートは役割を増すだろう。
(窪田伸雄)