トップオピニオンメディアウォッチ山上被告「厳罰」か「情状」かで裁判員を惑わすワイドショーの“罪”

山上被告「厳罰」か「情状」かで裁判員を惑わすワイドショーの“罪”

近鉄大和西大寺駅前の安倍晋三元首相が銃撃された現場=2022年9月8日午後、奈良市
近鉄大和西大寺駅前の安倍晋三元首相が銃撃された現場=2022年9月8日午後、奈良市

死刑判決もあり得る

安倍晋三・元首相銃撃事件で、山上徹也被告(42)が今月13日、殺人と銃刀法違反で起訴された。被告として「罪と罰」が法廷で問われることになり、事件は大きな節目を迎えている。

この段階にくると、これまで犯行動機と浮上している世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への恨みばかりに焦点を合わせ、あたかも山上被告を“被害者”のように扱ってきたワイドショーの出演者たちも法律の知識抜きに、情緒的なコメントを乱発するわけにはいかなくなっている。

同日付のテレビ欄を見て首をひねった。昼のワイドショーで、「起訴へ」の文字があったのはTBS「ゴゴスマ」だけ。不思議なことに、これまで旧統一教会追及の急先鋒(せんぽう)で、他のどの番組よりも頻繁に事件を取り上げてきた日本テレビ「ミヤネ屋」にはなかった。

そこで「ゴゴスマ」を見た。解説者に招かれた元東京地検特捜部検事の弁護士、若狭勝氏は厳罰か情状かが裁判の争点になると解説した。検察が「悪質極まりない事件」と判断すれば、求刑は死刑。一方、「旧統一教会絡みの情状」を考慮すれば無期懲役になると言う。そして、弁護側は、責任能力を争わなければ、山上被告の苦境、つまり情状を最大のポイントとして裁判に臨むことになると指摘した。

では、殺人事件の被害者1人で死刑求刑はあり得るのか。若狭氏は事件の「特記すべき事情」を挙げ、あり得るとした。これは法律の知識がなければ語れない。

「(山上被告は)オープンスペースの路上で、銃で射殺した。日本は銃社会でない。銃を発射しただけで無期懲役が用意されている。その上、一瞬にして絶命を余儀なくさせられたという殺人。だから、1人だったとしても死刑求刑は当然という考え方が検察にはある」

事件にはさらなる特殊性がある。安倍元首相は選挙期間中の応援演説中に射殺されており、選挙妨害の公職選挙法違反にもなる。選挙は民主主義の基盤だから、軽く考えてはいけない。そして「(被害者は)長く日本の総理だった。その功績がある。また今後もいろんな(政治上の)意見を発信する人であった」。そのような重要な政治家を殺害したという重みも考慮する必要があると強調した。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »