防衛費増額で自由民主

「復興財源の流用ない」強調

記者の質問に答える岸田首相
記者の質問に答える岸田首相(UPI)

時期についても国民に明示を

政府は昨年12月16日、国家安全保障会議(NSC)と臨時閣議を開き、外交・安全保障の基本方針となる「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の3文書を改定した。敵のミサイル基地をたたく「反撃能力」の保有が明記されたことは国内外で大きく報じられた。

また防衛費について、2027年度までの5年間の総額を約43兆円とした。これは現行計画から1・5倍以上の増額だ。さらに27年度に防衛費と研究開発など関連経費とを合わせて、現在の国内総生産(GDP)比2%とする目標を掲げた。

3文書改定に先立ち、岸田文雄首相は防衛費増額の財源について「国民の税で協力をお願いしなければならない」と明言。1兆円規模の増税方針を打ち出し、与党に検討を指示した。「唐突」とも言える展開に閣内・党内から異論が噴出する中、首相の「年内決定」の強い意向を受け、自民、公明両党の税制調査会は法人税など3税を増税する方針を決定。12月16日に決定された23年度与党税制改正大綱に明記した。

自由民主(1・17)では1面で「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」をQ&A形式で説明している。中でも赤字・太字・囲み文字で強調されたのが関連図中の「復興財源を防衛費に流用することはありません」との表現だ。財源を検討するに当たり、特に強い反発を受けたのが「復興特別所得税の活用案」だったからだ。

最終的に決定した税制措置では、所得税に1%を上乗せする新たな付加税を設け、同じ付加税方式で東日本大震災の復興予算に充てている復興所得税の税率を2・1%から1・1%に下げることで、納税者の負担割合は現状のまま維持する。これによって失われる1・0%分の税収は、37年までとなっている復興所得税の課税期間を延長することで確保する。

当初、「政府・与党が復興特別所得税の活用を検討している」と報じられると、野党を中心に批判が相次いだ。立憲民主党の泉健太代表は「いつの間にか防衛費に転用される。こんなことが納得できるのか」と反発。日本維新の会の馬場伸幸代表は「禁じ手」「あまりにもひどい発想」と断じた。これに加えて、被災地の住人らからも不安の声が出た。こういった懸念を払拭(ふっしょく)するため、記事内でも復興財源の総額は確実に確保する旨が強調されている。

ただ、税目が重要なのは間違いないが、それと同等、もしくはそれ以上に重要なのは増税の時期である。税制大綱では先送りされており、記事中でも「令和6年以降の適切なタイミングで開始」「令和9年に向け複数年かけて段階的に実施」「(たばこ税は)関係する方々への影響には十分配慮し、予見可能性を確保し、段階的に実施」と説明されるのみで、いつどのように決定するのかも分からない。

岸田氏は昨年12月27日、増税前の衆院解散・総選挙に初めて言及。「国民に負担をお願いするスタートの時期までに選挙はあると思う」と述べ、増税の是非について信を問うとも取れる発言が波紋を呼び首相周辺は火消しに追われた。

増税がいくら理にかなっていて、やむを得ない事情があったとしても、唐突な決定であれば大きな波紋を呼ぶのは当然である。23日からの通常国会では、増税の是非に加えて、増税するならいつどのようにその時期を決めるのか、増税前に信を問うのかについても、国民に明示されるよう期待したい。

(政治部 亀井 玲那)

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