
企業追い込む六重苦
物価高(インフレ)が止まらない。ロシアによるウクライナ侵攻によって原油・穀物価格が上昇し、さらに円・ドル相場で円安が加速し、輸入価格を押し上げていることが主因だが、その余波がわれわれの生活を脅かしている。
12月8日、企業を専門対象とする信用調査会社の帝国データバンクが11月の倒産件数を発表したが、同月は570件に上り、前年同月比で102件上回り、7カ月連続で前年同月比増加となった。とりわけ燃料や原材料の仕入れ価格上昇を価格に転嫁できずに倒産を余儀なくされる「物価高倒産」は46件に上り、5カ月連続で過去最多を更新している。同社によると2022年通年での物価高倒産は300件を超えると予想する。果たして、インフレはいつまで続くのか。
こうした物価、景気、為替相場、さらに企業動向について経済誌が分析している。一つが週刊エコノミスト(12月13日号)の「景気 物価 ドル円」。そしてもう一つが、週刊ダイヤモンド(12月10日)の「倒産危険度ランキング」である。
このうち、ダイヤモンドの「倒産ランキング」は年に1度の恒例の企画になっているが、今回の倒産増加の原因について、次のように分析する。「(新型コロナ禍での企業に対する)ゼロゼロ融資の終了など支援策が一段落し始めた。そこに経済環境の激変が襲い掛かった。怒涛のように侵攻する円安に急激な物価高。倒産を増やす様々な要因が一気に噴出し、『六重苦』となって企業を追い込んでいる」と指摘する。
ここでいう六重苦とは、円安、物価高、新型コロナウィルスの拡大感染による販売不振の他に社長の高齢化、人手不足、ゼロゼロ融資の支援終了があるというのである。社長の高齢化とは企業後継者の不在であって人材不足と同様、今に始まったことではないが、それらの要因が複合的に絡み合って倒産に至る。ちなみにゼロゼロ融資とは、新型コロナ禍で自治体が最初の3年間の利子を負担し、元本は信用保証協会が保証してくれる、実質無利子・無担保で融資を受けられる手厚い支援があった。そのゼロゼロ融資の返済の時期がやってきたのである。