トップオピニオンメディアウォッチ「旧統一教会問題」NHKが再放送した『群衆心理』で、世論と政治の相互作用がよくわかる

「旧統一教会問題」NHKが再放送した『群衆心理』で、世論と政治の相互作用がよくわかる

集団デモのイメージ
集団デモのイメージ

「群衆の暴走」に警鐘

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る“被害者救済”に向けた新法案が6日審議入りするが、会期内成立は見通せない。政府・与党は政権の支持率低迷に焦り、法案を拙速に提出。一方、立憲民主党はじめ野党は、憲法違反の内容まで入れ込むことを要求している。この異常な政治状況の背景には、反宗教のメディアと情報操作に弱い世論、そしてこれらに媚(こ)びる政治家の存在があるというのが筆者の見立てだ。

政治・メディア・世論のトライアングルが形成する“負のスパイラル”に楔(くさび)を打ち、民主主義を健全にするにはどうしたらいいか。そんなことを考えていたら、NHKEテレ「100分de名著」が格好の材料を提供してくれた。

11月に4回シリーズで取り上げた『群衆心理』(1895年初版)だ。著者はフランスの社会心理学者ギュスターヴ・ル・ボン。「自由・平等・博愛」を掲げながらも、結局、独裁体制と人権抑圧国家を生み出したフランス革命を題材に、メディアに触発された群衆の暴走に警鐘を鳴らした名著だ。日本の大衆が群衆になるのか、今はその瀬戸際ではないか。

ル・ボンは、群衆の特徴について次のように述べる。「群衆は、もっぱら破壊的な力をもって、あたかも衰弱した肉体や死骸の分解を早めるあの黴菌(ばいきん)のように作用する。文明の屋台骨(やたいぼね)が虫ばまれるとき、群衆がそれを倒してしまう。群衆の役割が現れてくるのは、そのときです」。「保守思想の父」として知られる英国のエドマンド・バークは著書『フランス革命の省察』で「『民意はつねに正しい』という発想を許容してはならない」と釘(くぎ)を刺した。

戦後70年以上、豊かさと平和を求め続けた日本人。しかし、少子化などで社会の屋台骨が軋(きし)む中で、大震災、パンデミックなど大事件が相次ぐ。不安を増大させる大衆がメディアと政治と相互作用しながら、異質な小さな教団を排除しようとする空気は、全体主義への予兆のように見える。

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