各紙とも事実上訂正
さて、その毎日の今の話である。19日付2面の「土記」と題するコラムで専門編集委員の伊藤智永氏が「A級戦犯たちの残した根」と題し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体である国際勝共連合を取り上げ、「勝共連合は1968年、統一教会の文鮮明教組が朴正煕軍事政権の韓国中央情報部(KCIA)に支援を受け、韓国と日本に創設した」と書いている。
これは共産党が50年前に利用した古典的な虚偽情報の一つである。72年に連合赤軍事件が起こった際、勝共連合は「連合赤軍=日本共産党」「宮本リンチ殺人」の一大キャンペーンを張った。共産党は「勝共連合=統一教会はKCIAが作った」と応戦し、共産党批判の打ち消しに躍起となった。
その根拠としたのが米中央情報局(CIA)資料である。そこに「金鐘泌氏がKCIA部長時代に統一教会を組織し」とあった。金氏とは後に首相を務めた有力者だが、同部長に就任したのは61年で、教団が創立された54年の7年後のことだ。資料は誤情報で、CIA内部でまったく評価されていないシロモノだった。
各紙もCIA資料を報じたことがあるが、教団の否定談話を掲載し事実上訂正した。中でも読売は78年9月23日付にきちんと「訂正記事」を載せている。こういう経緯を知ってか知らずか、伊藤氏は共産党の尻馬に乗るように虚偽情報を使っている。
何でも「A級戦犯」に
また「(勝共設立を)日本で協力したのが、笹川良一(初期の勝共名誉会長)・児玉誉士夫・岸信介のA級戦犯容疑者仲間」とし、A級戦犯を極悪人のように描き、勝共幹部が街頭演説で「政治団体・勝共連合は解散できない」と語ったことについて「ずっと奥に根はある」と思わせぶりな文言で結んでいる。もっとも伊藤氏にかかれば、話は何でもA級戦犯に行き着くから驚くに値しないが。
なにせロシアのウクライナ軍事侵攻ではプーチン露大統領を非難せず、逆にウクライナのゼレンスキー大統領を外交に定見がなく勢いだけで当選した「ポピュリズムの典型」と指弾したのが伊藤氏である(毎日7月8日付「記者の目」)。その記事でも近衛文麿や東条英機らのA級戦犯を持ち出してゼレンスキー大統領を揶揄(やゆ)していた。
とまれ毎日には西山氏といい伊藤氏といい、活動家記者が少なからずいるようだ。
(増 記代司)