認知症におわす記事
5年に1度開催される中国共産党大会が先月下旬、閉幕し今後5年間の新体制が決まった。
ドラマはその最終日に起きた。習近平国家主席の隣に座っていた胡錦濤前国家主席が、関係者によって「強制退席」させられた。席を立つように促された胡氏は、机を掴(つか)んで抵抗を示したものの、脇の下に手を差し込まれ、連れ出されたのだ。一体何があったのか。海外メディアは、「習一強体制への不満爆発など」いろいろ書き立てた。
これに対し朝日中国総局の冨名腰隆特派員は11月7日付記者解説面9面の「中国独自モデルで『強国』を追求」をタイトルとした記事で、「胡錦濤前総書記の退席騒動は健康問題による可能性が高く、政局的な動きは見えない」と書いた。
冨名腰氏は「そもそも79歳の胡氏に健康不安説があったことは確かだ」とし「映像からは、隣席の栗戦書全国人民代表大会常務委員長が話しかけても反応が鈍い胡氏の様子が伝わる」と認知症をにおわせる書き方もした。
だが、胡氏は開幕式で1時間45分に及んだ習氏の活動報告にも中座することなくフルで参加し、帰りには習近平氏にあいさつを超えた強い言葉を掛けている様子が見て取れる。さらに最終日の「強制退席」時、自分の腹心である李克強氏に、肩をたたきながら激励するような声を掛けてもいる。そもそも認知症を患っている人物が、そういうことができるかという疑問が湧いてくる。
大体、こういう場合の政権サイドのコメントは、反対読みした方が正しいケースが圧倒的に多い。国営新華社の英語版ツイッターは「胡氏は病気だった」と弁明じみたコメントを出しているが、これはチャイナウオッチャーからすれば「胡氏の病気説は嘘(うそ)」ということになる。