
信教の自由制限無視
7月の参院選で勝利した岸田文雄政権は「向こう3年間は国政選挙なく、じっくりと政策課題に取り組める」とみられていた。ところが、選挙中の安倍晋三元首相の遭難、以降の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)叩(たた)きの影響等で岸田内閣の支持率はじりじりと下がり、被害者救済新法をまとめる与野党協議もなかなか前に進まない。
そんな中、週刊文春(11月17日号)が「岸田“逆ギレ解散”12・18総選挙の悪夢」を書いて、木枯らしが吹く前から解散風を煽(あお)っている。
同誌が予測する岸田首相が解散を打たなければならない理由とは何か。まず党内事情だ。「新法成立の指示を無視する人物が自民党内にいる」として、「政権ナンバー2の茂木敏充幹事長」を挙げた。茂木氏がブレーキを踏んでいるのは公明党に配慮しているからだと、茂木派幹部は同誌に語っている。
寄付上限額を設けるとなると、公明党の支持母体である創価学会に限らず、伝統、新興を問わず宗教団体の反発が予想される。同誌は「収入源である寄付を制限するような法案は死活問題」と創価学会の事情を説明しているが、問題は「収入」だけではない。寄付をするしないは厳密には憲法20条の信教の自由(宗教的行為の自由)を制限しかねないのだが、同誌はそこには目を向けず、もっぱら政治的事情の面からしか説明していない。
来年春には統一地方選を控えて、公明党の協力が鈍れば、自民党系の議員は痛手を受ける。「だから配慮しないわけにはいかない」という次元の見方だ。地方議員からは「岸田じゃ戦えない」という声も届いていると「官邸中枢の一人」は同誌に明かす。