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旧統一教会信者の強制棄教

裁判のイメージ(Image by succo from Pixabay )
裁判のイメージ(Image by succo from Pixabay )

「逮捕監禁」黙認した紀藤弁護士ら

日本社会の宗教観の歪(ゆが)みを端的に映し出しているのは、信仰を持つ人間を親族らが拉致監禁して行う強制棄教問題だ。「カルト」の信者は「マインドコントロール」の犠牲者で、少々手荒な手段を講じてもそれを解くことは正当な行為であるという論理がまかり通っている。

その最大のターゲットになってきたのが旧統一教会の信者たち。教団によれば、その犠牲者は1960年代後半から今日までに4300人を超える。中には、「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」代表の後藤徹氏(58)のように、監禁期間が12年5カ月と、信じ難いほどの長期間に及んだ例もあり、その違法行為の悪質さは裁判で認定されている。

だが、弊紙を除けば、この問題に正面から切り込んだのは筆者の知る限り、宗教ジャーナリストの室生忠氏とルポライター、米本和広氏しかいない。両者にはそれぞれ著書『日本宗教の闇』と『我らの不快な隣人』があるので、一読を勧めたい。

最近も、憲法が定めた「信教の自由」を無視する言論空間のおぞましさを象徴する出来事があった。お笑いタレントの太田光氏(爆笑問題)がMCを務めるテレビ番組で「今までも拉致して閉じ込めたりして、いろいろ問題が起きてきて、答えはまだ見つかっていない」と強制棄教について問題提起したところ、「統一教会の主張を代弁する太田光さん」(ジャーナリストの江川紹子氏=日刊スポーツ電子版)などと批判を受け、封殺されてしまった。

強制棄教について政治家やジャーナリストが口を閉ざす理由はここにあるのだろう。反統一教会の空気に占領された言論空間の中で、これを問題視することには「統一教会の代弁者」と、猛烈なバッシングが待ち受けている。

そんな中で、月刊誌「Hanada」12月号が強制棄教問題を取り上げた。ノンフィクション作家、福田ますみ氏の「ルポ統一教会①―新聞・テレビが報じない“脱会屋”の犯罪」。14ページに及ぶ力作は「統一教会の代弁者」のレッテル貼りを覚悟の上だろう。

この論考のポイントは三つある。一つは、被害者にインタビューし違法行為と人権侵害の凄(すさ)まじい実態を伝えていることだ。「脱会屋」の宮村峻(たかし)氏は自らの活動に引き込んだ元信者を引き連れて監禁現場にやって来て「『ほんとうなら、ぶん殴って半殺しにしてやるところだ』とみなで怒鳴りつける。完全な吊るし上げです」と後藤氏は証言する。言葉の暴力だけではない。実際、親族から顔を何度も平手打ちされた。食事も粗末となり、70キロあった体重は50キロまで痩せ衰え、ついに生ゴミまで漁(あさ)るようになったし、高熱を出しても病院にも行かせてもらえなかった。

もう一つは、強制棄教が「反統一教会陣営によってシステム化し、拉致監禁ビジネスともなっていた」と明らかにしたことだ。親族に拉致監禁を指示していた宮村氏やキリスト教牧師には、依頼した親族から謝礼が入るだけでなく、後者は改宗させて自派の信者にすることもできる。また、棄教した元信者が起こす“霊感商法被害”訴訟を担当する弁護士にはかなりの額の報酬が入るというわけだ。

三つ目は、現在「メディアによって正義のヒーロー扱いされている」全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の弁護士、紀藤正樹氏や山口広氏が宮村氏と“不適切な関係”にあり、しかも彼の手法が「法的に逮捕監禁」に当たることを知っていたことを暴露した証言に注目したことだ。これは、前出の米本氏がかつて全国弁連に加わっていた弁護士、伊藤芳朗氏にインタビューしてまとめ、後藤氏の民事裁判に提出した陳述書を基にしており信憑性が高い。詳しくは「Hanada」の論考を一読してほしい。

福田氏は最後に、次号で「巨悪とされる霊感商法の真相」と、その被害者を救済するために組織されたとする全国弁連の「成り立ちと真のねらいについて述べる」としている。消費者庁の霊感商法対策検討委員として政府に食い込み、自民党の会合にも呼ばれる弁護士の「正体隠し」にどこまで迫れるか。次号を期待したい。

(森田 清策)

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