中立的でない出演者
一方、それなりに定義してみせた川島が教えている東北学院大学は「福音主義キリスト教」系の大学で、しかも彼は「日本脱カルト協会」顧問。学術的には定義できない言葉を冠する団体に関わり活動していることを考えると、彼は宗教によっては中立的な姿勢を超えたスタンスを取っていることが分かる。このことは番組出演者で、同じく脱カルト協会の顧問を務める宗教学者(北海道大学大学院教授)の櫻井義秀にも言えることだ。
島薗と、川島や櫻井との間でカルトという言葉の定義を軸に議論を進めたなら、逆に宗教の本質に迫ることなったはずだ。同じことは、民放番組のコメンテーターたちが頻繁に口にするだけでなく、この番組の出演者たちも使った「マインドコントロール」という言葉にも言える。
だが、番組はこれらのテーマで議論を深めようとしなかったのは残念だった。出演した宗教学者たちには、特定の宗教団体とその信者にカルトやマインドコントロールという言葉を使うことが信者の内心を傷つけ、人権侵害にもつながるのではないか、と問うて見たかった。