安価な徘徊型の兵器
ウクライナ侵攻で苦戦するロシアが反撃を試み、首都キーウ(キエフ)を含むウクライナ各地の民間施設が標的となっている。死傷者も多数出ている。この攻撃で多用されているのは、イラン製のドローン「シャヘド136」だ。
三角形の独特の形のドローンが目撃され、すでに数多くの画像、動画がメディア、SNSで公開、拡散されている。イスラエルの保守系紙エルサレム・ポストはシャヘド136について、「カミカゼドローン、徘徊(はいかい)型兵器としても知られ、進歩を続けるドローン戦で効果的なツールであり、ロシアはその可能性をよく認識しているようだ」と指摘している。
米紙ワシントン・ポストによると、全長は3・3メートルの三角形で、最大速度は約180キロ、ノーズ部分に弾頭が取り付けられ、「上空を数時間徘徊し、標的を確認すると、爆弾のように降下する」という。
エンジンは2ストロークのピストンエンジンが採用され、非常にシンプルで安価。インドのニュースサイト「フロンティア・インディア」は、シャヘド136が「その独特のエンジン音からウクライナでは芝刈り機と呼ばれている」と指摘している。
「1機当たり330万~800万円」(英紙ガーディアン)とされ、ミサイルや有人機の迎撃に使用されるミサイルよりもかなり安価だ。ウクライナですでに数百機が撃墜されているというものの、建物、発電所などのインフラにかなりの被害が出ており、飛来する総数は相当なものだろう。
一方で低速で、低空を飛行するため、迎撃されやすいとされている。現地からは、警官や民間人が、拳銃やライフル銃で迎撃しようとしているとされる映像が流れてきたのはそのためだろう。だが、フロンティア・インディアによると、シャヘド136は金属部分が少なくレーダーで発見されにくいという。コストを抑えるためと思われ、イランが意図したかどうかはともかく、ある意味「ステルス機」だ。
さらに、一度に多数のミサイルを発射し、敵の防空網を圧倒する「飽和攻撃」の手法が取られ、迎撃しきれず、被害が出ているもようだ。