
中朝連携し奇襲のシナリオ
「ウクライナの次はどこだ」、新東亜(10月号)が「シナリオで構成した韓半島危機」を書いている。元韓米連合軍司令部作戦計画課長を務めたキム・ギホ江西大教授による「最悪の状況を設定した仮想シナリオ」だ。以下、それを基に構成する。
11月10日、中国は同日午後を期して一斉に台湾を奇襲攻撃した。10月23日には第20期中国共産党中央委員会第1回全体会議で習近平国家主席は予想通り3選を果たし「完全なる統一実現が中華民族の偉大な復興の必然的要求」と強調していた。
8月の1カ月間だけでも台湾の防空識別圏に進入した中国軍機は444機に達していた。訓練だろうと台湾は油断していた。台湾海峡は最も狭いところで130キロ、中国の戦闘機はこれを3分以内に越え、空対地ミサイルは1分以内に台湾核心部を打撃した。
中国軍は米軍の対応時間を考えて、わずか数時間で主要戦闘作戦を終えた。半導体工場と国家基盤設備、海軍および空軍基地を打撃して主要機能をマヒさせた後、上陸作戦は遂行しなかった。
米軍は2波攻撃に備えて韓国星州(ソンジュ)に配備している高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)砲台を台湾へ展開するように措置した。目が台湾に向けられると、北朝鮮はすぐに戦術核兵器が装着された極超音速ミサイルで韓国主要国家・軍事戦略施設を精密打撃した。ソウル龍山(ヨンサン)の大統領執務室、平沢(ピョンテク)サムスン半導体工場、3軍本部がある鶏龍台(ケリョンデ)と星州サード基地が打撃目標だ。ミサイルはソウルまで1分41秒、星州まで3分で到達した。
駐日米軍司令官と在韓米軍司令官は緊急戦闘準備態勢を指示し、米軍のアジア太平洋戦力が全部、台湾に集中したその瞬間を狙って金(キム)正恩(ジョンウン)総書記は攻撃を敢行したわけだ。中国・北朝鮮が完全に連携した作戦である。
もちろん、ロシアがウクライナで勝利できなければ、中国の台湾へ向けた武力示威も「単純デモ」に終わる可能性が高い。しかし、シナリオと似たような状況が起きれば、韓国安保は大きな脅威に晒(さら)される。アジア太平洋の情勢が危機に陥るほど、米国の戦争抑止力は順次低くなる…。
こうした危機が想定されてもなお、「昔も今も韓国政界では政争が真っ最中だ」と同誌は嘆く。日本も似たような状況だ。このシナリオでは日本の役割に言及されていない。専守防衛の範囲には先島諸島も当然入る。「台湾有事は日本有事」。故安倍晋三元首相の言葉が身に染みる。
(岩崎 哲)