導入企業は3割未満
もっとも、ダイヤモンドの調査は従業員が1000人以上の中堅・大企業を対象にしたものだが、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査によれば、役職定年制の導入率は2019年時点で28・1%と3割弱で、導入企業では役職定年年齢は平均すると54歳前後となっている。従って、役職定年は日本の企業すべてが導入している制度というわけではない。ただ、ほとんどの企業の定年年齢が65歳となっている昨今、この制度の歪(ひず)みが出ているのも事実。
ある電機系の上場企業で管理職だった人の話として同誌は「これまで管理職としてチームを束ねてさまざまな業績に貢献してきたつもりだが、そういったリーダーシップは役職定年後は一切求められない。それよりも、ずっと現場にいた社員と同様の地道な業務スキルが求められる。なかなかつらい」といった声を紹介しているが、そうした悲哀を感じる人は多いと思われる。
人生100年時代で企業の定年も65歳まで、あるいはそれ以上に引き上げられていくケースが出てくる中で、管理職であった人が役職定年後、十数年間も会社内でのモチベーションを上げられないまま務めていくのは“酷”と言わざるを得ない。
在り方見直す時期に
役職定年の問題はある意味で、これからの時代の生き方において、価値観の転換を求めているようにも捉えることができる。すなわち、サラリーマンにとって「管理職は唯一のゴールではない」こと。管理職を外されたとしても自分の生き方、働き方をしっかりと捉えることのできる「自律型の人生価値観」を持つことが求められている。
一方、これまで役職定年は企業側からすれば「体のいいシニア社員のリストラ代替手段」と揶揄(やゆ)されることもあった。しかし、企業の業績を伸ばすためには、従業員全員が一つのゴールに向かって動く体制がつくられなければならない。その意味で役職定年制度はそのものの在り方を見直す時期にきていることは間違いない。
(湯朝 肇)