異端容認が民主主義
「何がなんだか、訳が分からなくなってきた」――普通の思考力を持つ人間ならそう思うに違いない。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題のことだ。
この問題に関する野党ヒアリング(12日)で、宗教法人を管轄する文化庁は家庭連合については、現時点で解散命令を請求する対象に当たらないとの認識を示した。過去に解散命令を受けた宗教法人は2例ある。オウム真理教と明覚寺(本覚寺)だ。
前者については説明するまでもないだろう。明覚寺は、いわゆる「霊視商法」が詐欺商法だとして損害賠償請求が多発。僧侶らが逮捕されるとともに組織的詐欺と認定されて解散となった。家庭連合はそれには当たらないというわけだ。
だが、マスコミは「反社」(反社会的団体)のレッテル貼りを行い、岸田文雄首相も自民党総裁として関連団体との関係を「断絶」すると宣言した。関連団体と少しでも「接点」があった政治家はメディアによって吊(つる)し上げ状態にさらされている。
BSフジ「プライムニュース」(9日放送)で、高井康行弁護士(元東京地検特捜部検事)は「日本はいつの間に全体主義国家になったのか」と義憤を露(あら)わにした。そして、オウム真理教のような明確な反社なら話は別だがと断りながら、「自由主義や民主主義は異端の存在を認めるかなんだ。異端の存在を認めないというなら自由・民主主義はない。法律家として言えば、(家庭連合は)宗教法人格を持つ合法的な存在だ」と強調。その上で、「『統一教会の人たちを政治から排除する』と言うが、あの人たちも有権者で、基本的人権を持っている。政治家にも意見を言い、意見を聞く権利を持っているはずだ。それを『全部排除しろ』と。これが民主主義国家のやることですか」と訴えた。
つまり、家庭連合が「反社」と認定されていないのに、「排除しろ」と言うことにも、岸田氏が「断絶宣言」することにも、痛烈な異議申し立てを行ったのだ。さらに、自民党が家庭連合との関係を断つと言うのなら、秘書の信仰調査を行うのか。また、野党は地方議員まで調査しろと言っているが、これは基本的人権の侵害だというのである。