
信徒に自殺未遂者出る
この論考を書いている26日に気が付いたのだが、安倍晋三元総理銃撃事件に端を発して巻き起こったメディアによるバッシングの渦中にある世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下教団)が25日、報道機関向けに「異常な過熱報道に対する注意喚起(2)」と題するプレスリリースを出した。
その中で、「当法人信徒(20代後半・女性)による自殺未遂事件」が起こったことを明らかにした。教団は21日にもテレビ、新聞、週刊誌などで続く教団とその友好団体に対する批判報道は、憲法で保障された「信教の自由」を無視した「魔女狩り的なバッシング行為」で名誉毀損(きそん)に当たるとともに、信者と関係者に対する人権侵害だとする注意喚起のプレスリリースを出していた。
それでも収まらぬ過剰な批判報道が自殺未遂者を出すまでに至ったことを知ると、単なるバッシングを超え“報道テロ”の次元に達したように思える。この論考はこれ以上の悲劇が起きないことを祈りながら書いている。
メディアによる教団批判キャンペーンに、筆者は二つの点で、強い憤りを感じてきた。一つは、安倍氏銃撃の真相究明から国民の目をそらすことになるだけでなく、教団に恨みがあったと供述していると報じられた山上徹也容疑者のテロ正当化につながるという点だ。
もう一つは、教団が指摘するように、信者の内心を踏みにじる人権侵害である。これは、メディアに関わる人間の側に信仰についての無知があるのかもしれないが、日ごろ、弱者に寄り添う姿勢の重要性を説きながら、安倍氏銃撃事件にまったく関わりのない信者の人権を無視しているのだから、このダブル・スタンダード(二重基準)は悪質である。
前者については、テレビや週刊誌と違い、その危険性について警鐘を鳴らす論考が論壇に少なくない。文藝評論家の小川榮太郎氏はマスコミ報道に「殺人容疑者への同情論が横行する」と指摘した上で、「いつの間にか主題は統一教会に移し、統一教会=悪と決めつけたうえ、その団体と安倍氏の間に特別な関係があったかのようなフェイクニュースを大々的に展開、カルト教団と関係があった以上、暗殺されても仕方なかったと言わんばかりの印象操作が繰り返される」と述べている(「“安倍貶め報道”は仕掛けられた歴史戦」=「Hanada」10月号)。
ブロガーの藤原かずえ氏も「安倍氏に対しては『自業自得』『殺されても当然』『因果応報』といった罵声(ばせい)が飛び交(か)い、国葬反対が叫ばれ」る一方で、山上容疑者には同情が集まり、減刑の署名活動が盛り上がっているとした(「山上“礼讃”の報道テロリズム」=同)。
さらに「まさに日本社会は、山上容疑者の目論見(もくろみ)を支援するマスメディアによる【情報操作information mani-pulation】を受け、テロの被害者を非難し、テロの加害者を擁護するという世にも不思議な本末転倒の展開となっている」と嘆いている。
一方、「世界日報特別取材班」も、弊紙を教団の「機関紙」とツイートした石垣のりこ参院議員に対する反論記事(「デマを拡散させた石垣のりこ立民議員の居直り」=同)の中で、教団に対するバッシングが政界にも飛び火している状況を「これはまさに容疑者がテロによって意図したとおりの展開である」と指摘し、模倣犯が生まれることに警鐘を鳴らしている。
メディアによる教団バッシングに関しては、世論操作に脆弱(ぜいじゃく)な国民のメディアリテラシーの低さも浮き彫りになっている。ネット上には教団を誹謗(ひぼう)中傷する書き込みが溢(あふ)れるばかりか、教団本部にも脅迫電話や手紙などが連日届いているという。また、藤原氏の論考によると、安倍氏の国葬をやめないと、「全国の子どもを誘拐する」(テレビ高知、7月26日)など、多くの自治体にテロを予告する脅迫メールが届いている。
「まさに非常識なマスメディアの論点操作は、山上容疑者のテロリズムを目論見どおりに成功させ、新たなテロリズムの実行にインセンティヴを与えたのです」(藤原氏)