450万人の「子供難民」
連日ワイドショーは「旧統一教会と政治家」の話題を取り上げている。こうも続くとさすがに視聴者は食傷気味になる。食傷気味といえば、2月末に始まったロシアによるウクライナ侵攻では、これも連日戦況が伝えられたが、そのうち、陸続きで避難民が押し寄せている欧州で「ウクライナ疲れ」が出てきて、関心が薄れがちになった。
人は誰でも否定的な情報に晒(さら)され続けると、無意識的にもこれを無視し、頭の中から締め出そうとする。
しかし、そうやって忘れられていく中で、置き去りにされる問題がある。ウクライナでは「450万人の『子供難民』」だ。ニューズウィーク日本版(8月23日号)が「報じられないウクライナ戦争」の特集の中で取り上げた。
戦争を体験した子供は大きな心理的傷(トラウマ)を負う。家族や故郷が奪われるだけでなく、貴重な時間も失う。学力や身長の伸びも低下する。ウクライナを追われた子供たちは異国の地で不安な生活を続けている。
しかし彼らは他の地域に比べれば多少は幸運だった。同誌にジャーナリストのアダム・ピョーレ氏が書いている。「ロシアのウクライナ侵攻は、アフガニスタンやイエメンなど非白人・非欧州諸国の紛争に苦しむ子供たちのニーズが、おそらく過去最大に高まっている時に起きた」として、「多額の寄付や拠出金が(ウクライナに)殺到して、世界の他の紛争地での援助活動が手薄になる」危惧があると指摘している。
ウクライナへの支援を見ていて感じるのは、それ以前に生じていた南スーダン、イエメン、アフガン、シリア、ミャンマーのロヒンギャなど、同じく支援を必要としている子供たちがいるのに、どうしてウクライナだけ「手厚い」支援を受けるのか、また、世界はウクライナにだけ目を向けるのか、ということだった。
この点に対して、欧米社会に“良心の疼(うず)き”があったことはいくらかでも気が休まる。これが記事の主たる論点ではないにしてもだ。