「性接待」疑惑で党員資格停止
韓国で与党代表が窮地に陥っている。国民の力代表の李(イ)俊錫(ジュンソク)氏(37)が過去の「性接待」疑惑を追及され、党から「党員資格停止6カ月」の処分を受けたのだ。
日本では現在「政治家と宗教団体」がメディアでかまびすしいが、韓国では「政治家と性問題」が時々表に出てくる。ソウル市長だった朴(パク)元淳(ウォンスン)氏は女性秘書から「長年にわたってセクハラを受けていた」と訴えられ、裁判を受けることなく、自ら死を選んだ。忠清南道知事だった安(アン)熙正(ヒジョン)氏もセクハラで実刑判決を受け収監されていて、最近、出所したばかりだ。
李代表が問われている「性接待」は、芸能界でよく話題に上る、いわゆる「枕営業」だ。李氏は事実無根だとして裁判に訴えているが、党は真偽を問う前に「品位維持義務を守らなかった」という理由で厳しい処分を下した。
昨年の李氏の登場は政界に新風を吹き込んだ。支持層が偏っていた保守政党に若い世代を引き込み、中道層へ支持を広げ、同党を大統領選と地方選の勝利に導いた立役者とも評価されている。
ただ、李氏はいまだに議席を持たず、政治経歴もほとんどなく、“若さ”と“爽(さわ)やかさ”だけが売り物だったと言ってもいい。党内には李氏処分を「兎死(とし)狗烹(くほう)」だと言って反発するグループもいる。ウサギ狩りが終わった後、猟犬は不要になる、つまり李氏をお払い箱にしたという意味だ。
党代表の権限は権(クォン)性東(ソンドン)院内代表に任されているが、ここで一気に党主導権の転換を図ろうとする張(チャン)済元(ジェウォン)議員らは非常対策委を構成して、党則を改正し、早期に党大会を開いて執行部の一新を目論(もくろ)んでおり、党内権力闘争の兆しが見え始めた。
この件を紹介した月刊朝鮮(8月号)はこうした状況の中で、いっそのこと李氏は同党にとどまらず、党内支持者をまとめて「改革保守新党」を立ち上げたらどうかと訴えている。国民の力に恋々としている理由はないというわけだ。
こうした足元のごたごたに対して尹錫悦大統領の声は聞こえてこない。それどころか本人の急落する支持率をどう押しとどめるかで精いっぱいだ。李氏の動向が注目される。
(岩崎 哲)