札幌地裁判決影響も
安倍晋三元首相の銃撃事件をめぐって読売が9日付社説で「要人警護の体制不備は重大だ」と口火を切った、同体制の検証がこれから本格化する。警察がまな板の上に載せられるわけだ。それだけに留意すべきは、警察批判は左派言論の十八番(おはこ)だったことだ。
その筆頭、朝日はこれまで警察に対して幾度となく批判を加えてきた。直近では、札幌のヤジ制止事件がある。2019年の参院選で安倍首相(当時)が札幌市内で演説中に男女2人がヤジを飛ばし警官が制止したところ、「政治的表現の自由を奪われた」と札幌地裁に訴え、今年3月に原告が勝訴した。
これを朝日は鬼の首を取ったように報じ、社説は「裁かれた道警 許されぬ憲法の軽視」(同29日付)と、裁かれた、許されぬ、と罵倒の文言を並べ立て警察を批判した。
9日付の読売社説はこれを俎上(そじょう)に載せ「要人警護のあり方に検討の余地はあるにしても、容疑者がやすやすと至近距離まで近づいて発砲するまで、何の措置も取らなかった」と問題視した。これに対して朝日は12日付社説「『失態』検証し説明せよ」の中で「(札幌地裁判決が)影響したと見る向きが一部にあるが、状況は全く異なる。政治に対する言論による異議申し立てと、無法な暴力とを混同するようなことはあってはならない」と切り返した。
だが、朝日の主張に説得力があるとは思えない。警察も人の子だ。あれだけ罵倒されれば、警備に慎重になることもあり得る。むろん今回の失態の言い訳にはならないが、その点も徹底検証すべきだ。