重要な犯行動機解明
安倍晋三元首相が凶弾に倒れてから10日経(た)った。テレビ、新聞、週刊誌、ネットなどあらゆるメディアに、事件に関する情報が溢(あふ)れている。日本を代表する政治指導者が凶弾に倒れ、国内外に衝撃を与えたのだから当然のことだ。
だが、テレビのワイドショーでは、「コメンテーター」たちが真偽不明の情報を基に表面的な論評を繰り広げている。今回のような重大事件はメディアの質を露呈させるものである。
そんな中で、注目されるのが山上徹也容疑者の犯行動機。宗教団体に対する恨みがその団体とつながりがあると思い込んで安倍氏に向かったという構図が浮かび上がるが、しかし教団への恨みと安倍氏襲撃との間にはあまりの距離がある。事件の全容解明はここが重要ポイントだが、現段階ではそこではなく、母親の献金問題、そして宗教と政治家との関わりだけがクローズアップされているのはメディアの宗教理解不足が一因だろう。
コメンテーターの論評が表面的だと指摘したが、この二つの点に関して冷静な発言もあった。11日、宗教法人「世界平和統一家庭連合」(家庭連合)の会長が記者会見し、母親が信者であることを説明したことを受け、TBS「ゴゴスマ」で、元宮崎県知事の東国原英夫氏が次のように語った。
「献金に関しては、信教の自由があり、その範囲以内での自己責任、自主的な信仰だと思う」。また「政教分離を謳(うた)っているから、一定の距離を置かないといけない」とした上で、「宗教団体が掲げるイデオロギー的なもの、今回は世界平和だが、それに賛同する政治家は多いと思う」とも語っている。
政界に詳しい人間の間では、政治家がさまざまな宗教関連団体とつながりを持つことは常識だ。もちろん、法に触れることでもない。では、なぜ20年前の母親の献金問題から生じた家庭連合に対する容疑者の恨みが、今になって安倍氏襲撃につながったのか。
東国原氏は「どう考えても逆恨み、妄信(もうしん)、勘違い、自分の中の恨みが勝手に増幅されていったようなイメージ」と捉えているという。また同日放送の日本テレビ「ミヤネ屋」で弁護士の橋下徹氏は次のように語った。