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ロシアのウクライナ侵攻で試される汎アフリカ・地域主義―英紙指摘

関与を強めるロシア

一方で、アフリカ各国のウクライナ侵攻を強く非難する国はほぼなく、大半が中立。これは、ロシアが近年、「貿易、経済支援、軍事訓練、安全保障などさまざまな面でアフリカ大陸に関与を強めてきた」ことが一因だ。

3月初めに行われたウクライナ侵攻即時停止を求める国連総会での決議は、7割超が賛成したが、反対、棄権、無投票の48カ国中、アフリカ諸国は半数超の26カ国に達した。

アグベルシ氏はこれについて、北大西洋条約機構(NATO)への懐疑的な見方、軍事、小麦、肥料などでのロシア依存、冷戦復活への拒否感があると指摘している。

新型コロナウイルスの感染拡大で経済に大きな打撃を受けたのはアフリカも同様であり、ウクライナ侵攻はそれにさらに拍車を掛ける格好となっている。経済的困難、イスラム過激主義の台頭などを受けた政情の不安定で、このところサハラ砂漠南部サヘル地域各国でクーデター、政権転覆が多発した。

アグベルシ氏は、「貿易の多様化へアフリカ各国政府は、東西双方と関係を築きたい意向を強めている」と指摘、「ウクライナ侵攻は明らかな国際法の侵害だが、地政学的な大シフトの中、どのように外部のパートナー国、アフリカ内の国家間の関係を維持していくかが大きな課題」と結論付けている。

ロシアは、アフリカ北部に民間軍事会社「ワグネル」の傭兵を派遣、政治的影響力を増している。カタールの衛星テレビ局アルジャジーラによると、中央アフリカでは、「ワグネルが事実上、国家を運営している」(タウンゼント米アフリカ軍司令官)とされ、マリでは、政府軍と共に行動し、イスラム過激派掃討作戦を実施、多数の民間人を殺害している。

民主化を進める好機

一方で、ウクライナ侵攻はアフリカへの西側の影響力強化、民主化の好機と捉える見方もある。

米平和研究所(USIP)「アフリカ・センター」のジョセフ・サニー副所長は、ウクライナ危機は「またとないチャンス」であり、「大西洋を挟んだアフリカとの協力関係で長期的に、民主主義と世界秩序を強化」すべきだと主張、アフリカ各国への政治的、経済的支援、投資の増強を訴えている。

(本田隆文)

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