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土木学会の「津波評価技術」を軽んじるアエラの「憤る原告」の記事

自由に立ち入りできないようフェンスで閉ざされた帰宅困難区域 =2020年3月21日午後、福島県の富岡町
自由に立ち入りできないようフェンスで閉ざされた帰宅困難区域 =2020年3月21日午後、福島県の富岡町

最高裁が統一的判断

東京電力福島第1原発事故で避難した住民らが国に損害賠償を求めた集団訴訟の最高裁判決が6月17日にあり、「東電に安全対策を命じても原発事故は防げなかった可能性が高い」として、国の責任を認めない判断を示した。アエラ6月27日号「憤る原告『肩透かし』だ」のタイトルで論じている。

記事は、判決言い渡し後、「『生業を返せ、地域を返せ!』福島原発訴訟(生業訴訟)」の弁護団事務局長の馬奈木厳太郎弁護士が、最高裁正門前で「肩透かし判決だ」と怒ったその言葉を引用して「最高裁判決では判断が割れていた津波の予見可能性や、それに国が適切に対応していたかについて、最高裁が判断を示すと期待していた。ところが津波のリスクを国の規制権限でどう扱うべきだったか、十分検討せずに、国の責任を認めない結論を導き出していた」と断じている。果たしてそうか。

まず「津波の予見性」についてだが、4件の集団訴訟は地裁、高裁では結論が分かれていた。しかし初めて統一的な判断を示した最高裁判決は、「津波の規模が想定よりもはるかに大きく」と予見性を否定し、施設への浸水を防げなかった可能性が高いと結論付けた。最高裁は明確な判断を示したわけだ。

もう一つの論点は、「津波のリスクを国の規制権限でどう扱うべきだったか」という点だった。これには、まず国の地震調査研究推進本部が、福島第1を大津波が襲う以前の2002年7月に発表した「長期評価」と、東電など電力業界が使っていた(社)土木学会原子力土木委員会が作成した「津波評価技術」に対する信頼性について考察する必要がある。

記事では「『長期評価』は、法律にもとづいた、国による公式な地震の予測だ。一方『津波評価技術』は、電力会社が費用を全額負担して土木学会に委託し、電力社員が中心になって取りまとめた何の法的裏付けもない予測である」と「津波評価技術」の方が劣ると決め付けている。

しかし平成以降の原発管理の実際を考慮すると、電力業界が津波予測で利用していた「津波評価技術」を「何の法的裏付けもない予測」としてその価値を一蹴するのは、はなはだ遺憾だ。これは原発の津波に対する安全性評価技術を高度化・提案することを目的として、土木学会の経験、実績から生み出されたものだ。

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