米連邦最高裁の中絶権否定判決で「社会分断」の根深さ伝えたNHK

容認派の運動激化へ

だが、前回の大統領選挙に絡み、不正投票疑惑と連邦議会乱入事件で表面化した社会の分断がさらに激化することについては、案じずにおれない。「ロー対ウェイド」判決がキリスト教保守派の中絶反対運動に火を付けたように、今度はその逆で「中絶は女性の権利」と主張するリベラル派の運動が激化するに違いないからだ。

また、大統領が任命する最高裁判事の理念によって、判決が大きく変わることで司法制度への不信感がさらに高まることも懸念されるが、これ以上、自由主義陣営のリーダー米国の分断激化は、対峙(たいじ)する全体主義国の中国やロシアを喜ばせるだけではないか。

さらに、レイプや近親相姦(そうかん)などで妊娠した場合でも「赤ちゃんはかわいそう」と言って、中絶を禁ずる主張には違和感を覚える。筆者は命の尊厳派だが、中絶に関しては、当事者(未成年者の妊娠は親族を含める)の選択に委ねられるべき領域があっていいと思うからだ。

中絶問題扱う番組を

一方、日本を見ると、2020年の中絶件数は約14万5000件で、前年比7・3%減。この年はコロナの影響も考えられるが、長期的なスパンで見ても1955年の117万件から大幅に減っている。歓迎できる傾向で、その大きな要因は避妊の普及だと考えられている。これは中絶だけでなく避妊にも反対するキリスト教保守派にとってのジレンマではないのか。

事ほどさように、米国の中絶論争から考えさせられることは多い。米国の分断をうまく描いてみせたNHKには、米最高裁判決を機に、日本のメディアがあまり触れたがらない中絶問題を、視聴者に深く考えてもらえるような番組提供を考えてもらいたい。

(森田清策)

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