維新除きかすむ野党
参院選が公示されて1週間、メディアの序盤情勢がほぼ出そろった。どれを見ても与党優勢で波乱要因は少ないようだ。むろん選挙は水物。予断を許さないが、焦点は日本維新の会が立憲民主党を抑えて野党第1党に躍り出るか、改憲勢力が3分の2以上の議席を獲得するか。そんなところになりそうだ。
総じて言えば、維新を除いて野党の存在がかすんでいる。なぜそうなのかといえば、昨秋の総選挙ですでに答えは出ているように思う。一つは立憲民主党と共産党の「立共・共闘」への国民の拒絶反応、もう一つは「批判ばかりで代案がない」野党への愛想尽かし。この2点に尽きるのではないか。
それで反共産の姿勢を明確にし、与党案に時に賛同する野党(維新・国民民主党)が国民から一定の評価を得ている。加えてロシアのウクライナ軍事侵攻で左翼政党の空想的平和主義の馬脚が露見した。だから今参院選は与野党の攻防だけでなく、「野党とは何なのか」が改めて問われる。それは「追及野党」か「提案野党」かの攻防とみてよい。
毎日の与良正男・専門編集委員は同紙夕刊の「熱血!与良政談」(15日付)で、「お手軽過ぎる野党報道」とメディアにも矛先を向けて「追及野党」の肩を持っている。
与良氏によれば、通常国会で国民民主が政府の新年度予算に賛成したことは「野党としての一線を越えている」。また維新が立憲の提案した内閣不信任案を「茶番」として反対したことも野党の態度ではない。新聞もテレビも日頃、「政党は政策で競うべきだ」と言いながら、不信任案も野党案も小さく扱うのはおかしい。そう論じ、さらにこう言う。
「そんな私も、もはや少数派なのかもしれない。いくら『野党の最大の仕事は政権を厳しくチェックすることだ』と力説しても、『時代遅れだ』と言われるような世の中なのだ」
いささか自虐的であるが、これが典型的な「追及野党」像だ。与良氏は政治部記者を経て論説副委員長を務め、テレビのコメンテーターとしても知られる。だが、氏の論には違和感を禁じ得ない。