
成長戦略推進が柱に
岸田文雄政権の看板政策「新しい資本主義」の実行計画が決まった。企業の教育訓練など人的投資を早期に倍増させるほか、スタートアップと呼ばれる新興企業の数を5年で10倍に増やすなど「人」「新興企業」「科学技術」「グリーン・デジタル」の4分野に重点投資することが柱。官民が連携して、市場に任せていては進みにくい取り組みを促進するという。
本欄では、5月31日に示された行動計画の原案について各紙が論評した社説を基に評したい。掲載日順に見出しを並べると次の通りである。
1日付朝日「分配重視の理念消えた」、毎日「アベノミクスに逆戻りだ」、産経「看板倒れにならぬ政策に」、2日付日経「成長と安定を将来世代へ着実に届けよ」、3日付東京「『分配』は掛け声倒れか」、4日付読売「方向性が一層不明確になった」――。
列挙した通り、日経以外は左派系紙はもちろん保守系紙までも、首相が当初掲げた「分配重視」のトーンダウンを批判する論調になった。
朝日は「出てきた計画は、まったくの期待外れだった」と落胆し、「本来、優先的に取り組むべきは、働き手への利益還元である。賃上げに消極的な企業行動を改めさせる手立てこそが、計画の柱になるべきだった」と批判。
毎日も「政策の力点が、立場の弱い人の不安解消から、成長戦略の推進にずれていったように見える」として「分配重視」はどこに行ってしまったのか、と嘆く。左派系紙からすれば、当初の期待から裏切られた思いが強く、批判が厳しくなるのは予想できる。