中国の罠にかかった国連
このウイグル人の人権弾圧問題をめぐっては、国連のバチェレ人権高等弁務官が5月23日から28日の日程で中国を訪問、新疆ウイグル自治区には2日間ほど滞在した。
産経は31日付の主張で「バチェレ氏は人権侵害のさらなる糾明をすべきだったが、同氏は今回の訪問について『調査ではない』との立場をとり続け、中国側に配慮する姿勢を示した。調査でなければ何のために同自治区を訪れたのか理解に苦しむ」とバチェレ氏の訪問そのものに疑問を呈した。
一方、毎日は同日付社説「ウイグルの人権問題 大国の信頼損なう弾圧だ」で、「新疆を視察した国連のバチェレ人権高等弁務官は『国際的な人権基準』に沿って政策を見直すよう求めた。人権部門の責任者が現地に足を運び、『疑念と懸念』を提起した意味は重い。中国政府は真剣に向き合わなければならない」と矛先を中国政府に向けた。
字面だけ追うと毎日社説も「なるほど。その通り」と思うかもしれないが、国連人権高等弁務官が新疆に入ったことを政治利用したい中国の罠にかかったも同然なのだから、ここは産経の言う主張に軍配が上がる。
仕事もせずにただ訪問するだけなら、プライベートな私費による観光ツアーで十分だし、何より中途半端な訪問で妥協したことにより、次の本格的な調査の門を自ら閉じてしまうことにもなりかねないからだ。
中国側のかたくななまでに閉ざされた門を開けるには、中途半端な形で妥協したら、それ以上には進まないと覚悟すべきだ。
毎日はせっかく25日付1面トップでスクープ記事を飛ばしたのに、論説で「画竜点睛(がりょうてんせい)を欠く」格好だ。