女性の権利法益奪う
自分が男性か女性かは「自己決定」できるという考え方が社会に広がると、何が起きるのか。それについて、八木氏は4月4日、自民党本部の「性的マイノリティに関する特命委員会」におけるLGBT当事者ヒアリングの内容を紹介し、「女性の権利法益を奪うとの意見が相次いだ」としている。
例えば、トランス女性もトイレなどの「女性の空間」を使えるようになるので、「女性だけの安全な空間がなくなる」。トランス女性だけでなく、「女性」を詐称する男性が犯罪目的に女性の空間に入ってくることだってあり得るだろう。実際、そんな事件も起きている。
さらには「トランスレズビアン」(トランス女性のレズビアン)から「セクハラや性的暴力を受ける例があるが、問題にすると『差別主義者』や『ヘイト』のレッテルを貼られる」というのだ。日頃、LGBT当事者との付き合いのない人にとっては、具体的にイメージしにくい懸念かもしれないが、東京で2年前、次のような“事件”が起きている。
新宿2丁目の老舗レズビアンバーが開いている月に1度の女性限定イベントに、米国人トランス女性が参加しようとしたところ、店側が拒否。それに対して「差別だ」と批判が巻き起こり、店側が糾弾され謝罪に追い込まれたのだ。“LGBT界隈”では有名な事件で、男性を恐れる女性の権利と女性として扱われることを求めるトランス女性の権利という、性的少数者同士の衝突として話題となった。このほか、条例が成立すれば、「理解増進」の美名の下、学校で過激なLGBT教育が行われるのは必至だ。
差別のレッテル量産
結論として、八木氏は「『性の多様性に係る理解増進』と称し『差別』のレッテル貼りを量産し、対立や分断を招いても、女性の権利を侵害するだけで、決して問題の当事者の利益にもならない」として、自民党埼玉県議団の条例案について「再考を求めたい」としている。まったく同感である。
(森田清策)