
集団的自衛権の言葉避け
公明党の機関紙「公明新聞」(5・4)が、党外交安全保障調査会の勉強会から「新たな国家戦略の策定へ/日本の安全保障」と題し、政府が年末までに策定する新たな国家安全保障戦略(NSS)についての解説記事を掲載した。
公明党の視点は護憲、非核三原則、専守防衛にある。宇宙、サイバー、核兵器開発と弾道ミサイル発射実験を行う北朝鮮、増幅する中国の軍事的脅威などへの対処や、目下のロシアのウクライナ侵略事態と両軍の装備と実戦などを念頭にNSSは策定されるだろうが、これにブレーキ役で存在感を示す方向だ。
記事では、一部野党が「集団的自衛権の行使を認めた憲法違反」として反対する安保法制について、「平和安全法制の意義/憲法9条の範囲内で同盟の信頼性を向上」の見出しを立て、憲法の範囲内で専守防衛を強化したと反論した。安保法により米軍が攻撃された場合も自衛隊が必要最小限度の実力を行使できるようになった。主に海上での日米共同作戦などを想定した事態だが、記事は、同法による厳格な条件を適用した自衛隊の実力行使は「“他国防衛”ではなく、自国防衛の範囲内であることが確認され、専守防衛は強化された」と力説。
一方、「集団的自衛権の限定的行使という言い方は、…国際法上、集団的自衛権にあたる場合もあるということを示しているだけだ」とも付け加えている。これは安保法に向け憲法解釈を変更した2014年7月1日の閣議決定が、日本の武力行使について「国際法上の根拠と憲法解釈は区別して理解する必要がある」とし、憲法上許容される武力行使が「国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある」としていることに由来する。
同法施行に向けて当時の安倍晋三首相は「自国防衛のための集団的自衛権の一部行使容認」という言葉を施政方針演説で用いた。反安保法制運動から生まれた立憲民主・共産・社民など野党共闘も「集団的自衛権行使」を反対のため強調する。しかし、公明党はあくまで「専守防衛」と主張したいということだ。
憲法解釈に対する解釈が各党で生まれている。創価学会の基盤の上に護憲政党として結党した公明党は、ウクライナ侵攻の中の参院選で支持者の前に共産党などから「憲法違反」攻撃される「集団的自衛権行使」を「一部」でも「限定的」でも認めたとは言われたくない事情はあろう。
(窪田 伸雄)