黒海封鎖で穀物高騰、中東・北アフリカの暴動危機伝える英NGO

小麦とパンのイメージ(Photo by Wesual Click on Unsplash)

別ルートの輸出模索

ロシアはウクライナ侵攻で黒海を封鎖、ウクライナから穀物などの食糧輸出が滞っている。国連などは「世界的な食糧危機」の発生を警告、ロシアに封鎖の解除を求めている。中東・北アフリカ各国では、食糧の高騰で暴動発生の危険も指摘されている。

国連の世界食糧計画(WFP)のビーズリー事務局長は米CNNテレビで13日、ロシアのプーチン大統領に対し、「世界中の何百万人もの人々が死ぬことになる」と港の開放を訴えた。だが、ロシア側は封鎖を解除するどころか、大量の穀物を盗み出し、自国へと輸送している。

米経済誌フォーチュンは、ウクライナが別のルートで小麦を輸出することを模索しているが、技術的な問題もあり、依然、実現していないと報じた。それによるとウクライナ政府は、ポーランドを通って列車でリトアニア、ラトビアの港まで運ぶことを各国と検討している。成功すれば、ウクライナ経済への後押しにもなる。

ウクライナの小麦輸出量は昨年、世界全体の10%を占めていた。しかし、ロシアによる海上封鎖を受けて、2月の終わりから輸出は停止、フォーチュンによると、大麦、ライ麦など約2500万㌧の穀物が保管されたままで、そのうち小麦1200万㌧は輸出向けだという。

他国の港からの輸出を提案したのは、ラトビアのレビッツ大統領で、4月13日のウクライナ、ポーランドなどの首脳との共同会見の際だった。数週間にわたる交渉の末、すでに、リトアニア、ラトビアでは港を開放する準備が整っているという。

ところが、そこにインフラの問題が立ちはだかり実現を困難にしている。ウクライナからラトビア、リトアニアに運ぶには、ポーランドを通過しなければならないが、ウクライナとポーランドで列車の軌道の幅が違うため、国境で積み替える必要があり、「時間もコストもかかる」という。

その上、ウクライナの鉄道網はロシアの攻撃で大きな被害を受けていることも障害となっている。そのため、トラックによる輸送も考えられているというが、そうなればコストアップは避けられない。

フォーチュンは、「直ちに解決することが必要だ。ウクライナでは、700万㌶に穀物が植えられ、この夏の収穫を待っている。倉庫は既にいっぱいで、輸出できなければ、収穫もできなくなる可能性がある」と早急な解決を呼び掛けている。

「中所得国」に大打撃

一方、英ロンドンを拠点とする非営利団体(NGO)ミドルイースト・モニター(MEMO)は、穀物や燃料価格の高騰を受け、「中所得国」が甚大な打撃を受けていると警鐘を鳴らしている。中東・北アフリカでは、特に穀物の輸入への依存度が高いエジプト、チュニジア、レバノンで暴動が発生する危険性が高まっている。

食糧価格の高騰が2011年の中東民主化運動「アラブの春」の発生の一因となった。主食である小麦などの自給率が低く、経済的にも脆弱であるため、穀物の価格変動は国民の生活を直撃する。

MEMOは、「気候変動、紛争、新型コロナウイルスの感染拡大によって生活コストは上昇」し、ロシアによるウクライナ侵攻がさらに拍車を掛けていると指摘した。

エジプトの穀物輸入の80%はロシアとウクライナからであり、侵攻から3週間後には国内のパンの価格は25%上昇していたという。

レバノンも輸入穀物の80%をウクライナに依存しており、「昨年の世帯当たりの1カ月の最低限必要な食料コストは351%上昇」した。これは、昨年発生した首都ベイルートでの爆発も一因となっている。

国際協調で解決急げ

ウクライナは世界最大のヒマワリ油の輸出国であり、トウモロコシと小麦の主要輸出国だ。侵攻は長期化の可能性が指摘されており、国際協調による問題解決が急務だ。

(本田隆文)

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