政府のスマホOS寡占への規制論議で見解が分かれた読売と日経

携帯電話を使用している人のイメージ(Unsplash)

寡占の固定化を懸念

政府のデジタル市場競争会議(議長・松野博一官房長官)が4月下旬、スマートフォンの基本ソフト(OS)の競争環境に関する中間報告をまとめ、米IT2社による寡占状態の固定化に懸念を示し、法整備も視野に入れた議論の必要性を打ち出した。

現在、スマホOSはアップルの提供する「iOS」とグーグルの「アンドロイド」の2強が寡占。OS上で動作するアプリを入手するアプリストアや、ウェブサービスを利用するために使うブラウザーも、事実上、両社が提供するものを使わざるを得なくなっているため、中間報告は一方的なルール変更などで、アプリ事業者らに深刻な損害を与える懸念があるとしたのである。

この政府の中間報告に対し、社説で論評を掲げたのは、読売と日経の2紙のみ。今や生活必需品となっているスマホ市場の現状に危機意識が乏しいというか物足りない感じがする。

さて、2紙の論評だが、同じ保守系紙ながら一般紙と経済紙という違いからか、どちらもいかにも「らしい」論調を示し、見解が微妙に分かれた。

2日付読売は、「市場をゆがめているとの懸念が強まっている。政府は、規制強化の検討を急いでもらいたい」と規制強化に前向き。これに対し、5日付日経は「寡占の弊害を抑えつつ、規制対象の企業を含めて開発サイドのイノベーションへの意欲を十分に引き出す。そんな賢い規制をどう設計するか、政府の知恵が問われる」と開発サイドにやや重きを置いて市場の発展に規制は極力避けたいとの論調なのである。

競争阻害の行為多数

読売が規制強化への論議に前向きなのは、中間報告で「昨年夏から実態調査を行った結果、競争を阻害しかねない行為が多数、確認された」ことを重視したからである。

その行為とは「アップルは、有料アプリを開発する事業者がアップルのアプリストアでしか販売できないようにして、最大30%の高い手数料を取っている」「自社と競合する事業者のデータを無断で取得して、アプリを開発していた可能性もあるという」「グーグルは、検索で自社のサービスを最も目立つ位置に示す設定にしているとみられている」など。

中間報告はこうした事例を問題視して、巨大IT企業に対し、禁止項目をあらかじめ明示した上で、違反に罰則を科す事前規制の導入を検討する方針を打ち出したが、読売は「政府は、規制を具体化するための論議を加速させてほしい」と訴える。

「スマホは検索から決済、健康管理まで様々な用途に使われ、重要なインフラとなった。それを担う責任の重さを自覚すべきだ」というわけで、尤(もっと)もな主張である。

副作用の最小化望む

一方の日経は、見出しが「スマホOS寡占に対処を」で、「規制」という文言を取っていない。冒頭も「米アップルとグーグルによる2社寡占の弊害に切り込む契機になるのだろうか」と規制にはやや懐疑的な印象。

もちろん、読売が指摘したような弊害の具体例などについては、「報告書は公正競争が損なわれかねない数々の場面を当事者の証言などをもとに具体的に描き出しており、迫力がある」と認め、「いちど寡占化すると、市場の力で是正するのは難しい」とも指摘する。

政府は今後各方面から意見を募り、具体的な規制手法を検討する方針だが、同紙は「報告書に反発する2社の言い分も踏まえたうえで、実効性が高く、副作用の小さい規制の導入を急ぐべきだ」と市場の成長、発展を基本に望みながら、規制は「副作用の小さい」ものにとどめたいという経済紙らしい視点である。

もっとも、規制強化への論議の加速を求める読売も、規制による市場の縮小は望んでいまい。より正確に表現するなら、具体的に狙いとするところは日経と同様になるのかもしれない。

(床井明男)

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