トップオピニオンメディアウォッチ憲法記念日に浮世離れした「平和主義」をそろって唱えたリベラル紙

憲法記念日に浮世離れした「平和主義」をそろって唱えたリベラル紙

ロシア軍の侵攻を受けたウクライナの様子

「総点検時代」が到来

毎日の古賀攻・専門編集委員が4日付コラム「水説」で、「総点検時代の憲法」と題し、こう述べている。

「ロシアによる無謀な戦争は、憲法や安保政策の『総点検時代』を到来させた。一部で『危機に便乗するな』との声を聞くが、これだけの衝撃を前に憲法と結びつけて考えない方がどうかしている」

ロシアのウクライナ侵攻が「歴史の大転機」(今年版外交青書)とされるから、まっとうな見解だろう。ところが、残念なことに当の毎日社説は「危機に便乗するな」と言わんばかりに護憲を唱えている(3日付)。

「日本国憲法は『戦争の惨禍』を繰り返さないとの決意から生まれた。『国際平和』『武力行使禁止』は国連憲章と共通する。懸念されるのは、侵攻を憲法改正に結び付けようとする動きだ。安倍晋三元首相は『今こそ9条の議論を』と強調し、自民党は、国民の権利制限につながる『緊急事態条項』の新設を目指す」

首を傾(かし)げる主張だ。ウクライナでは国連憲章がいとも簡単に破られ「戦争の惨禍」の最中にある。日本国憲法が同憲章と共通すると言うなら、ウクライナ同様に「戦争の惨禍」に陥れられる危険性こそ懸念すべきだ。それなのに改憲論議を懸念するとは、どうかしている。社説タイトルは「平和主義の議論を深めたい」。相変わらずおめでたい「平和主義」のお題目だ。

毎日と社会調査研究センターによる世論調査を見れば、この社説の浮世離れが明白になる(3日付)。岸田政権下の改憲に「賛成」44%で、「反対」31%を大きく上回っている。9条を改正し自衛隊の存在明記も「賛成」58%で、「反対」26%をダブルスコアで圧倒していた。国民は護憲の方を懸念しているのだ。

抑止力に背を向ける

朝日もどうかしている。こちらの看板も平和主義。3日付社説「今こそ平和主義を礎に」は、「日本と世界の平和と安全を守るにはどうすべきか。これまで以上に多くの国民が、切実な思いを抱いているに違いない」としつつ、「単純な解は見つかるまい。だが、力で対抗するだけで実現できるものではない。日本国憲法が掲げる平和主義を礎にした、粘り強い努力を重ねたい」と、「力による対抗」すなわち軍事力(抑止力)に背を向け、何があっても護憲なのだ。そういう姿勢だから「解」を見つけることができないのだ。

朝日の世論調査でも毎日同様、改憲派56%で、護憲派37%を圧倒している(3日付)。自衛隊を9条に明記する自民党案は「賛成」55%、「反対」34%。緊急事態に国民の権利を一時的に制限することには「改憲で対応」59%、「必要なし」34%。朝日が戦争法のレッテルを貼り猛反対した集団的自衛権一部行使は「賛成」58%、「反対」39%。朝日と東大谷口研究室の共同調査(8日付)では、防衛力増強は賛成派が64%に上り、反対派は10%にまで落ち込んでいる。朝日社論の大敗北である。

ユートピア語る東京

東京もどうかしている。この期に及んで「『平和国家』は色あせず」と夢見る夢子さんだ(3日付社説)。絵本作家の作品を持ち出し、「ある大きな国が小さな国に攻め込みますが、その小さな国には軍隊がなく、戦いになりません。小さな国の人々に歓迎された兵士は遊びや歌、料理を習います」といったユートピアを語る。それは絵本の中だけの話にすぎない。

ウクライナで明らかなように現実の世界では戦って国を守らなければ住民虐殺、性暴力、強制連行など言語に絶する惨劇に見舞われる。自衛力と日米同盟の抑止力で「平和国家」が成り立っていることを東京は忘失している。

地方紙では北海道新聞が「この危機に乗じ」の常套(じょうとう)句を使って改憲派を批判し、河北新報、信濃毎日、京都新聞、高知新聞等々、少なからず同様の論を張っていた。日本中のリベラル紙が「どうかしている」状態を浮き彫りにした憲法記念日であった。

(増 記代司)

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