注目の小池・山本両氏
7月の参院選予測が早くも出てきた。週刊朝日(5月6、13日合併号)は「与党圧勝」して「改憲発議」へ向かうというのだ。5月3日の憲法記念日を前に参院選と絡めた企画で、同誌は政治ジャーナリストの野上忠興氏と角谷浩一氏に当落予測を依頼した。
今回の参院選で動向が注目されている人物が2人いる。東京都知事の小池百合子氏とれいわ新選組の山本太郎代表だ。
小池氏は「5月末に都内のホテルで政治資金パーティを開く」予定で、この微妙なタイミングが周りをざわつかせる。もし、国政復帰となり「全国区出馬という展開になると荒木(千陽・都民ファーストの会代表)氏も浮上する」と角谷氏は予測する。おニャン子クラブの元メンバーで俳優の生稲晃子氏を擁立したり、元バレーボール選手の朝日健太郎氏(現職)で話題を引っ張る自民党に押され気味の荒木氏にも芽が出てくるというわけだ。
だが逆に野上氏は、「都ファも小池氏もかつての勢いがありません。コロナの感染が拡大している状況下で、小池氏が前面に出てきたら逆効果でしょう」と否定的だ。
プラスかマイナスか、いずれにせよ、風が動き、水面に波紋が広がるということだ。こうして両論併記しておくのは「水もの」といわれる選挙予測では欠かせないもので、同誌もちゃんと保険を打って掛けている。
集票力のある山本氏がどこで出るかも焦点だ。既に衆院議員を辞職し、同党の櫛渕万里氏が繰り上げ当選して議席を維持。その上で山本氏は「選挙区で戦う意向」だそうで、東京になるか神奈川になるかで関係者はやきもきしている。
角谷氏は、山本氏が神奈川から出ると「立憲・共産の票を食って、結局は野党の潰し合いになる」とし、「少しでも与党にダメージを与えたいのなら比例で出ればいい」と注文する。一方、野上氏は「東京から出るのではないか」との予測を紹介。比例で出たところで、れいわは取れても1議席。ならば、東京選挙区で戦って議席を取る方がアピール効果、与党への圧力になるという見方だ。
その気見せぬ岸田氏
改選議席に4増で58議席を取る自民、改選前と同数の公明、躍進する維新で「結局、与党が余裕で過半数を維持する『圧勝』と言ってよい」と両氏とも数字を出した。
この数字と高支持率を維持する岸田首相が次に目指すものが改憲への動きだというのが同誌の“警戒”だ。「自公国3党連立政権」で、さらに「日本維新の会も加え、自民党の党是である憲法改正に必要な3分の2の議席数を確保する狙い」があるとみる。
憲法記念日を前に、改憲の是非には言及せず、ただ環境が整っていく事実を淡々と述べているにすぎないが、「このままでは自民党が圧勝する」「そうさせていいのか」という言外の主張が行間に見え隠れするのだ。
ただ、そういう警戒感は岸田政権には不要かもしれない。先ごろ自民党として政府に提出した国家安保戦略策定に向けた提言には「憲法改正」の項目と言わず、文字すらも見当たらなかったからだ。敵基地「攻撃」を「反撃」にするだとか、中国、北朝鮮にロシアを加えて三正面で脅威と対するだとか、防衛関係費を対国内総生産(GDP)比「2%以上」を目標にするだとか、小手先の文字遊びに終始して、大本の憲法に手を付ける考えは示していない。
もちろん、その気があっても、最初から前面に出して反発を買うよりも、状況が煮詰まっていくのを見つつなのだろうが、提言の素っ気なさからは、改憲の意思は見つけにくい。
本気度試される自民
ウクライナ事態は相手に侵略の気を起こさせないだけの自衛の強い意思と能力、同盟関係の必要性を強く想起させた。ただ「天は自ら助くる者を助く」という。同盟国頼みがいかに不確かなものかも明らかになった。自ら守ろうとしない者を助ける者はいない。
参院選で勝利すれば、「3年間国政選挙はない」と言われている。この間、党是である憲法改正に向かう岸田政権の、自民党の本気度が試されることになるのだが、同誌はそこまでは踏み込んでいない。
(岩崎 哲)