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20年ぶりの円安進行に警戒説くも肝心の金融政策で明言避ける各紙

相場のイメージ

金融緩和続ける日銀

円安の進行に歯止めがかからない。円相場は先週半ばには1ドル=129円台まで下落、この1カ月半で15円も安くなっている。

日米間の金利差拡大が大きな背景であるが、日本経済は原油や原材料価格の高騰から生活必需品の値上げが相次ぎ、これにロシアによるウクライナ侵攻の影響や円安が加わって、景気の行方に不透明感が強まっている。

27日までの2週間で円安に関する社説を掲載したのは朝日、読売、毎日、東京、産経の5紙。各紙は円安の急激な進行に警戒を説き、打撃への軽減策や支援策を求めるものの、肝心の金融政策については明言を避けている。

15日付で社説を掲載した朝日は、「外国為替相場の急激な動きは好ましくない」とし、「政府や日本銀行は打撃を最小限に抑えるよう柔軟な対応を心がけるべきだ」と強調。

日銀の金融政策については、先月の短観で企業の景況感が悪化に転じたことから、「現状で、日銀が金融緩和を続けることは理解できる」とし、「ただ、経済の先行きが不透明であるだけに、為替の安定を保つことも重要だ」と説くのだが、どうやって「安定を保つ」のかは示さない。

日銀が長期金利の上昇を抑えるために実施している指し値オペを念頭に置いてか、「金利操作手法などの工夫によって為替の過度の変化を可能な限り避けることを考える必要がある」と指摘するにとどまるのである。

17日付読売社説も、為替相場の急変動は経済への打撃が大きいとして、政府・日銀に対し「警戒感を強める必要がある」「為替相場の安定こそが経済にとって重要だという強いメッセージを発していくことが大切である」とする。

確かに尤(もっと)もなのだが、「日米の金融政策の違いが、円安の主な要因になっている」と指摘しているにもかかわらず、日銀の金融政策については言及が全くないのは、どういうことなのか。

「政府は、負担で困窮する家計や中小企業などへの効果的な支援策の検討を急がねばならない」と政府には求めても、日銀に対しては沙汰なしなのである。

修正に言及した産経

19日付毎日も金融政策には言及なし。「日銀が金融緩和を続ける以上、日米の金利差拡大は避けられない」と日銀の金融緩和を変えられない既定路線としているため、円安に歯止めをかける「即効薬」は見当たらない、とする。

同紙は、政府・日銀の円買い・ドル売りの市場介入について、「効果は限られる。米国は為替操作に否定的で、理解を得るのは容易でない」からで、その通りである。

この点、21日付東京は「政府と日銀は綿密にすり合わせた上で過度な円安を食い止める姿勢を鮮明にすべきだ」とし、今以上の大幅な下落に備え、為替介入実施の構えを求めたが、効果については先に言及した通りである。金融政策も問うていない。

そんな中、かろうじて金融政策の修正に言及したのが23日付産経である。円安にはこれまでに述べたデメリットのほか、輸出企業の収益改善などのメリットもある。「その両面から円安の影響を十分に見極めるべきである」とし、その上で、「必要ならば、金融政策の修正も含めて果断に対応しなければならない」というわけである。

なぜか沈黙する日経

社説で現在のマイナス短期金利、ゼロ長期金利を有害無益としたものはない。明言したのは本紙21日付「Viewpoint」の鈴木淑夫氏である。3月の短観から企業の事業変革投資の意欲は強いため、金融機関の貸し出し意欲を高め、同時に内外金利差を縮小して「悪い円安」を修正することが大切だからである。これによって、名目成長率が高まって、金利水準を上回る状況が続けば、積極財政下でも財政収支が悪化する心配はないというわけである。

このところ、なぜか日経に円安に関する社説がない。不思議である。

(床井明男)

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